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翔也がーーー死んだーーーー。 勉強も、スポーツも、なんでも卒なく出来て 母親思いで、優しくて、頼り甲斐があって いつもみんなの人気者だった その翔也がーーー死んだーーーー? だって今日の昼ーーーー 私と一緒に大学の食堂で食事をして… 「待ち合わせ遅れるなよ」 って 別れ際に私の頭をぽんと叩いた その翔也が……死んだ……? 「ーーーーー美緒…ッ……!」 母の泣き声が教えてくれる。 コレが、紛れもない事実なんだという事。 私の左目から、涙が一粒零れ落ちた。 なんで涙はいつも、左右対称には流れ出ないのだろうーーーーー そんな事を考えて間もなく、涙は止めどなく、両方から溢れ始める。 翔也が死んだーーーー… 翔也がーーー…死んだーーーー… それは実感の湧かない言葉として頭に届いてから、今私の涙腺を刺激して止まらない。 「ーーーッ…なんで……なんで翔也がーーー…」 私は母と同じく大きな泣き声をあげて泣き崩れた。 翔也が死んでしまった。 死んでなければ、私と今日、レストランで夕食を一緒に食べるはずだった翔也が。 私も母もわんわんと声をあげて泣き続け、それは途方も無く、終わりがない様な気さえした。 涙は流れても流れても流れ続け、私の目は翌朝腫れすぎて、重苦しい一重瞼になっていた。 なんて顔だろうーーーー。 そう思いながら目を冷やして、目の腫れを少しだけ和らげる。 目を冷やしているというのに翔也の事を考えれば涙が溢れてきて、氷を包む布に染み込んだ。 今日の夜はーーーー翔也のお通夜。 つい昨日の昼まで元気だった翔也がーーー血の気の無い亡骸になっているという事実にーーー私は耐えられるだろうかーーー。 でも1番辛いのはーーー突然亡くなった翔也とその母の淳子さんだ。 今まで一人息子の翔也をーーー愛情たっぷりにーーーたった1人で育ててきてーーーーその結果がこれなら、あまりにも残酷すぎるーーー (れい)はーーー親しく無いとはいえ同級生を突然亡くしてーーーどう思っているだろう。 携帯が無いから連絡は取れないけどーーー今日のお通夜にーーー澪はくるだろうかーーー そんな事ばかり繰り返し考えて、私は母と翔也の実家に辿り着いた。 家の前にタクシーが止まって、いざ翔也の家に行こうとすると足がすくんだ。 翔也に会いたいのにーーーー会うのが怖い。 翔也の死に打ちのめされてーーーやつれた淳子さんを見るのが怖いーーーー。 だって私は生きているーーーーー 翔也が死んだのにーーーー幼馴染でーーーー 小さい頃からずっと一緒だった私が生きていてーーー 生きて翔也の死に顔を見に来てーーーー 私が生きてる事すらーーーー嫌にならないだろうか。 翔也じゃなくてーーー階段から落ちたのが私ならーーーーってーーーー
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