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俺は湯川さんの事を心配しながらそのまま11時まで働き「エッジハウス」で少し早めの昼食を食べてから大学へと向かった。 大学の校門を通り、教室に入る。 今日1番の講義は、津田先生が担当だった。 ーーーー今日の朝も湯川さんを見てドキドキしたと言うのにーーーーこれから津田先生を見たら、きっと複雑な気持ちになる… 溜息混じりに教室に入って直ぐに、俺は要を見つけた。 茶髪にくるくるパーマ。若干猫背で携帯を見つめているのは、絶対要だ。 よくもレポートが終わらないからとバイトを休んだなと、文句を言ってやろうとした。 「よ〜う〜…」 恨めしさを最大限込めて、俺は要の斜め後ろに立ち、肩をポンと叩いた。 要は目を大きくして俺を見つめた。 なんだよ……いつもなら大袈裟に「うわ!!!」とか言うくせに…… 「あ……か……葛西………」 「……?……」 要の顔には表情が無く、いつものヘラヘラしている、目上の人にも平気で軽口を叩く、いつもの要とは異なっていた。 要につられるように教室を見渡すと、何かおかしい。 ヒソヒソと話している人、要の様に珍しく静かになっている人、落ち着かない様子で、携帯を見ている人ーーーーー。 なんだーーーコレーーー? ーーーなんでーーーーー 「ーーーーー!!!」 教室の扉が、静かに開かれた。 扉を開けた青木先生を、ここにいる全員が見つめていた。 この講義の担当は津田先生だったはずだ。 なのに何故、青木先生が来たのか。 その理由を知りたいが為に、ここにいる全員が、青木先生を固唾を飲んで見つめている気がした。 「ーーーー今からの90分は自習にします。 ーーーーすでに皆さんの中でもニュースで見た方もいるかもしれませんがーーーー ーーー…津田先生が亡くなりました… ……死因は現在…警察が調査中ですが…… 他殺の可能性が高いということです…… …いいですか…… マスコミに何か聞かれてもーーー …津田先生の名誉を損なう様な言動は慎む様にお願いしますーーーーー」 青木先生は青ざめた顔で教卓の前に立ち、そう告げた。 声がーーー震えているーーーーー 俺の脳裏に、昨日の津田先生と湯川さんの様子が蘇る。 津田先生は俺に笑顔でガッツポーズを作って見せ、湯川さんはそれを見て、愛おしそうに目を細めていたーーーー 「ーーーーッ…なんでーーー…」 不意に涙が込み上げてきて、泣きそうになる。 それは要も一緒ならしく、要は唇を引き結んでいる。 要は津田先生が話しかけやすいのか、廊下で顔を見合わせればよく話しをしていた。 それは津田先生も同じで、決して真面目とは言えない要をーーー津田先生は可愛いと思っていたのか、よく要の話を聞いては声を上げて笑っていた。 「………一体誰がーーー津田先生をーーー…」 自分の唇から無意識に出た言葉を、慌てて飲み込んで口をつぐんだ。 殺したんだと、言おうとした。 でもまだそうと決まったわけじゃないしーーーー殺すという言葉が恐ろしすぎて、今は口にすることすら躊躇ってしまった。
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