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「美緒ちゃん!!!」 津田先生が去ろうと私に背を向けた瞬間、私は後ろから翔也のお母さんーーー淳子さんに名前を呼ばれた。 振り返ると、手の届く距離にやつれた様子の淳子さんが立っている。 淳子さんは私の前まで来ると、両手で持っていたものを私の前に差し出した。 「翔也のカバンの中に入ってたのーーーコレ…美緒ちゃんの携帯よね…?」 私は驚いて携帯電話を受け取ると、それが確実に自分のものであるかどうか確認した。 間違いないーーーーケースも待受もーーー全て自分のものだーーーー。 もしかしてあの日…一緒にお昼を食べた時に私は携帯を忘れてしまってーーー翔也が渡そうと持っててくれてーーーー それで渡せないまま亡くなってしまったのかーーーーー そこまで考えてまた、私の目に涙が滲み始める。 「ーーーーありがとうございます…。 無くしたと思って…探してたんですけど…… 翔也が先に見つけてーーー…私に渡そうとして持っててくれたんだと思います……」 私が携帯を受け取ると、淳子さんは「渡せてよかったわ」と笑顔を作ってくれた。 私は再びお礼を言って頭を下げ、母と一緒に翔也の家を後にした。 2日ぶりに対面した携帯には、ちなみからの着信が3件、母からの着信は10件ーーーー。 いつもの事だけど、(れい)からの連絡は来ていない。 澪は研究に没頭するといつもこうだ。 でもーーー流石に…翔也が亡くなった事は澪も知ってるんじゃ無いだろうかーーーー まして研究発表会の前日に翔也が亡くなった事をーーーまるっきり知らないはずは無いはずだ。 そこまで考えて、今日がその、研究発表会であった事を思い出す。 ーーーー津田先生はーーー…発表会の後で忙しいにも関わらず翔也の為に来てくれたのかーーーーー… 私は帰りのタクシーの中で、ぼんやりと津田先生と澪の事を考えた。 仕方ない事なんだろうか。 澪が研究となれば、周りが見えなくなってしまう事。 普段連絡が遅いとか、滞るのはともかくーーー 同級生の翔也の死にもーーー関心を示さず、私に何も連絡してこない事ーーーー 津田先生は忙しくてもこうやって翔也の家に来てくれて、私の事も気遣ってくれるのに。 翔也だってーーーー忙しい時でも連絡すれば必ず連絡を返してくれていたのにーーー そうやって考えてから、私は思わずタクシーの中で蚊ほど小さく首を横に振った。 澪は澪なんだからーーーー津田先生や翔也と比べたりしてもダメだーーーー 澪が例えそうでもーーー私を好きでいてくれる事に変わりはないはずだーーーー そうだーーーーー 研究発表会が終わったら少しは時間ができるはずだから…今日帰ったら澪に連絡してみよう。 私は家に帰って少量の食事を摂り、お風呂に入ってからすぐに自分の部屋に行き、澪に電話をかけた。
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