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「こんにちはーーー」
その日の夕方、私は津田先生との約束通り、志波裏駅近くの中華料理屋ーーー空燕までやってきた。
赤と金色で装飾された外装は鮮やかで美しくて、私のイメージしていた中華料理屋さんとはかけ離れていた。
中華料理屋ーーーっていうより…高級中華料理店…って感じだーーーー
「コンニチハ」
外装と同じく店内の装飾にも見惚れていると、横から来た店員の男性に声をかけられた。
男性は色が白く、細い目をしていてーーー言葉は私達が話している日本語とはイントネーションが異なり、外国人のようだった。
「オヒトリ?」
男性は微笑んで、人差し指で1の数字を作った。
「あの……津田……
……津田慎さんと予約してるんですけどーーーー」
「先生」と言っても通じない気がした私は、津田先生の名前から先生をとって、フルネームでそう伝えた。
あってるよね…名前…津田慎でーーー
「アア!ツダサン!!!
ーーーーコチラ、ドウゾ!」
男性は右手でグーを作って、左手の掌をポンと叩いて、笑顔を作った。
男性についていくと、店の奥にあるソファとテーブルがある個室に案内された。
赤いソファに、焦茶色のテーブル…部屋は私と先生が使うには広すぎる個室で、私は男性に通された部屋が間違ってるのでは無いかと思った。
「広い……」
「ツダサンハネ、トクベツデスカラ」
戸惑いながらもそう呟いた私にそう告げて、男性は細い目を更に細くして微笑んだ。
私は男性に促されるままソファに腰掛け、先生を待つ。
こんなお店ーーーー普段来る事ないから緊張してしまう。
私の父と母と、一度だけ旅行に行って中華料理を食べた事があったけどーーーそのお店とも全然違う。
私は戸惑いながら、キョロキョロと個室の中を隅から隅まで見てから、テーブルに置かれたメニュー表に手を伸ばす。
メニュー表は中国語で書かれており、普段目にする漢字が並んでいる。
値段は書いてないけどーーーいいんだろうか…。
なんとなく漢字で、この漢字がこの料理なのかな?という想像はつくけどーーーーー
「お待たせ」
メニューを見ていると突然扉が開き、私は慌ててメニュー表を閉じて顔を上げた。
私の様子を見て、津田先生は微笑んだ。
「いいよ、閉じないで。見てて」
先程のお店の人も私を見てにっこり微笑む。
「カワイイカタデスネ」
「でしょ?それに、優秀なんですよ」
津田先生に言われた私は「そんな事ないですよ」と否定する。
優秀ーーーではないと思う…澪が優秀と言われるなら、納得いくけれどーーー
「『才色兼備』トイウコトデスネ……スバラシイ……
ーーーーゴユックリドウゾ」
男性は微笑みを崩さず一例して、個室の扉を閉めた。
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