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「ーーー紹介ってのも変か…… ーーー売るんだ、美緒を、その男にーーーー」 言いかけた瞬間、翔也のよく通る声は高らかな笑い声へと変わる。 「ーーー驚いたな…! ーーーーお前が俺にこうやって来るなんて… …もっと育ちが良いーーー可愛い顔した、お坊ちゃんだと思ってたのにーーー」 「警察に連れていく…犯罪だぞ…!!!」 僅かに震える澪の声。 私はこの瞬間思い知る。 翔也はーーーーあの日… 私とレストランで食事をした後ーーーー ーーーー私を男に売って…レイプさせるつもりだったんだという事ーーーーー 「犯罪だよ?ーーーだからなんだ? ーーーー言っておくけど美緒の携帯は俺が持ってる……俺が自分を売ろうとしてるって……お前が伝えようとしてもその術は無いーーー ーーーーーだからさ、交渉しようぜ?」 携帯は無くした私の為に翔也が持っていたんじゃないーーー翔也がーーー…私が澪と連絡を取れないようにする為に、盗んだんだーーーー 「ーーーー交渉?」 聞き返した澪の声の後、数秒の沈黙が走る。 翔也の息を吸う気配がして、私は絶望しながら耳を澄ませる。 翔也は私と引き換えにーーーー何を望むつもりだったのだろうーーーー 「お前辞退しろよーーー明日の、研究発表会」 「ーーーーーー」 その言葉を頭の中でもう一度繰り返す。 辞退ーーーーー? 澪が今までーーーー ーーー何ヶ月もーーーー何年もかけてやってきたのにーーーーー? 「ーーーお前がいると俺が1番になれないんだよ。 ーーー大学の時からーーーずっとそうだった… ーーーー邪魔なんだよ…お前……! ーーーーなぁ…安いもんだろ…そんくらい…! お前さえ辞退すれば…美緒にこれ飲ませるのも辞めてーーーーその男に売るのもやめてやるよーーーー?」 ダメだーーー吐き気がするーーーー… 知らなかった……信じたくないーーーー あんなに優しくてーーー何でもできてーーーー 小さい頃から一緒だった翔也がーーーー 「ーーーーよく考えろよ… ーーー美緒がその男にーーー好きに弄られて…ボロボロになってもいいわけ? その男レイプが趣味なんだよなーーーー… ……薬飲まされて抵抗できないまま……ソイツのオモチャになるなんて可哀想だろ? ーーーー俺だって本当はこんな事したく無いぜ? …可愛い美緒を思えばお前もーーーーー」 その瞬間翔也の声は途端に途切れ、何か大きなものが落ちるような音がした。 そして数秒後、音声は途切れた。 私は身体から血の気が引くのを感じる。
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