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「ーーーー満足させろよなーーー…!」
津田先生はそう言うと一気に美緒のワンピースを腰のかなり上まで捲り上げ、美緒の履いていたストッキングを破く。
美緒は咄嗟に、津田先生の手を掴んだ。
「ーーーーダメッ…!
……待って…慎さ……誰か…誰か来たらーーー」
言いかけた美緒は言葉を飲み込み、身体を縮こませた。
美緒の頭上スレスレに薬品庫の壁を叩き、津田先生は美緒を威圧して黙らせる。
「……誰も来ないってーーー
……ここにくるのは俺か伊賀の亡霊かーーー
…お前が大好きな…青木くらいなんだからーーーー
ーーー今は俺に口答えせずにーーー
黙って脚開いて、人形になってればいいんだよーーー!」
声を殺しながらも、抵抗する美緒。
その美緒と、力強くで繋がろうとする津田先生。
俺は白衣の中に入っていたポーチの中身を取り出し右手でそれをしっかりと掴んだ。
伊賀を殺した時よりもずっと高い濃度で、俺の中に湧き上がる明確な殺意ーーーー
俺は薬品庫の扉を開けて、一気に中に入り、津田先生が俺の方を振り返りきらない内に、先生の心臓を解剖セットの有柄針で一突きにした。
針が身体を突き進み、筋肉を貫通し心臓まで届く、嫌な感触がした。
「ーーーーーーッ……!?
ーーー…青木ーーーお前ーーーーーー…」
津田先生の手が俺に伸びてきて、俺は咄嗟に有柄針から手を離した。
殺しきれず、抵抗されたらなんて考えてはいなかった俺は、振り向きかけた津田先生を見て2、3歩後ずさる。
しかし、先生の伸ばした手は俺に届く事なく、津田先生は有柄針が刺さったままの心臓部分に手を当てたまま仰向けに倒れた。
「ーーーーーーー…澪………」
目の前で立ち尽くす、最も愛しい人。
その人の目は、涙で濡れていた。
俺が初めて好きになって、初めて手を繋いで、初めてキスをして、初めて一緒に眠った人ーーーーーー
「ーーーほんとなの?」
「ーーーーーー…」
俺の問いに、美緒はただ俺を見つめる。
「ーーー俺のせいでーーーー…
ーーー…美緒はコイツとーーーー
………十年も一緒にいるわけーーー?」
美緒は返事をしなかった。
きっとそれは返事をする事で
俺が自分を責めると思っているから。
美緒は優しすぎる。
あんな風にしか美緒を愛せなかった俺を許してーーー
ーーー挙句ーーー庇うなんてーーーー
「ーーーーごめん」
俺は津田先生がしたのと同じ様に立ち尽くす美緒の前に立ち、美緒の唇に口付けた。
そのまま美緒の小さな顔に手を添えて涙を拭い、舌を絡めるーーーー
「ーーーーッ!
……待って澪……こんなの……ダメーーーー」
「好きだったよーーーずっとーーーーー」
キスだけでは止まらず俺は美緒を抱いた。
津田先生の死体が転がる薬品庫で美緒と繋がって、行為を終えてから美緒の髪を撫でて、もう一度キスをした。
このキスが、きっと生涯最後のキスだと思いながら。
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