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「大学のカードキーの仕組みは…あの人から聞いて分かっていました……
それで思いついたんですーーー…私が……
青木澪として……大学に居た事にすればいいーーーー澪は大学を出る時に必ずカードキーが無い事に気づくだろうけどーーーー
ーーー大学を出る時はあの人のカードキーを使うーーーそしてあの人がポケットに入れたままの車の鍵を使って…あの人の車で遺体を運ぶーーーー
ーーーー…頭の良い澪なら自分のカードキーを取りに来ずにーーーーそうするだろうと思いましたーーーー」
今更だが澤田さんは手に持った手錠を、青木先生にも湯川さんにもつけようとはしない。
それは2人がもうーーー自分の犯した罪から逃げないという確信に見える。
「ーーー薬品庫を出た私は…実験室のロッカーを急いで確認しましたーーー
この格好で大学内をうろつくのはーーーまして実験室から出るのは不自然だと思ってーーーたまたま鍵がかけられていなかった雨谷さんのロッカーから白衣を盗んでーーー羽織りました……
そうして実験室を出た私はーーーーリネン室へ向かってーーーー…
そして白衣を脱いでリネン室にのカゴに入れてーーーーー何食わぬ顔で大学の外へ出てもう一度大学に入りーーーー
その時カードキーは使わずに……登校する学生の背後をすり抜ける様にして…校内へ入りましたーーーーー」
湯川さんはそこまで話すと息を大きく吸った。
まるで何かをーーーー言わなければいけないと決意したかのように。
「それでーーーーー…私………
ーーーーー紺田君に声をかけてしまったんですーーーー…」
俺も含め全員が、要の顔を見た。
要は俺達の視線を浴びる事が分かっていたかの様に、黙って湯川さんを見て頷いた。
「ーーーーー私は澪があの人を運んでいる間にーーー澪が大学に居たんだっていう証拠が欲しかったんですーーーー…
その時たまたまーーーー…食堂に来ていた紺田君を見かけたんですーーー…
……それで………私は紺田君を誘ったんです…
『夫の忘れ物を届けに来たのーーー
大学時代を懐かしみたいからーーーー…
一緒にお茶してもいい?』って……
それで紺田君にーーー自分が買ったのと同じコーヒーを買って……
ーーーーそのコーヒーの中に…私があの人と結婚してからずっと常用してるーー…睡眠薬を入れましたーーーー」
澤田さんは濃い眉毛の下にある目をわずかに大きく見開いた。
じゃああの時ーーーーーー
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