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「全然、いいっすよーーーー ーーーー湯川さんに……… ………利用されるならーーー」 要はいつも通りの笑顔で、そう微笑み返した。 俺は要にどんな視線を向けるのが正解なのかも分からなければ、要を見ることすら躊躇い、黙って口を引き結んだまま考えてしまった。 要は許したのだ。 自分を使って、青木先生の殺人を隠蔽しようとした湯川さんを。 自分が同じ立場だったらーーー俺はこんな風に湯川さんに微笑む事が出来ただろうか。 目の前で声を震わせて詫びる愛しい人に、こうやって堂々と目を合わせ、こんなにも優しく出来ただろうか。 理由があったとはいえ人を殺した青木先生を、庇い、隠蔽工作を計った湯川さんをーーーー俺はその事実を知らなかった時と同じにーーーー好きだと思えるだろうかーーーーー 「ーーーーー…ごめん……なさい………」 湯川さんの目に、涙が滲んでいくのが分かった。 青木先生の顔を、俺は見る事ができず、それはきっとーーー澤田さんも同じだった。 「ーーーー俺……やっぱり似てました……? 大学入りたての頃から…結構な頻度で言われたんですよ…… 『青木だと思った』ーーーって…… 白衣着てるとーーー…背格好が似てるらしくて、そう思われちゃうみたいです」 要はそう言って珍しく髪の毛を触った。 青木先生とそっくりの、要の髪型。 「ーーーー湯川さん眠る時ーーー俺の背中見てたでしょーーーー 電気消してからしばらくしてーーー絶対俺の方に体向けて眠りに着いてくれるからーーーーピンと来ました。 湯川さんは俺の背中を見てーーー青木先生を思い出してるんだろうなーーーってそう思ったら悔しい部分もあるんですけど…安心しました…… 湯川さんがたまに仕事中とか……ふと悲しい顔をするのーーーずっと気になってたんですけどーーーーそれは俺の知らないーーー青木先生を見ていたんだなーーーーってーーー ……分かったら、なんだかホッとしたというかーーーーなんていうのかな……!」 言いながら笑いかけた要に反して、湯川さんの左目から、涙が一粒こぼれ落ちた。 要は気づいていたのかーーー気づいていながらそれで良いと、黙っていたのかーーーーー 湯川さんが要の背中越しにーーーー忘れたくても忘れられない、青木先生の面影を見ていた事ーーーーー。
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