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「ーーー…全く…!!! ーーーーキミの…紺田君の証言さえあれば……もっと早く俺達警察は真相に辿り着けてたよーーーー…… ーーーー今回はキミを罪には問わんが…… ーーーーキミのした事も一歩間違えれば犯罪だからね……!」 澤田さんは困ったように溜息をついて見せたが、その目は薄らと涙の膜がかかっていた。 要も困ったような笑顔を作り、眉を少しだけ上げて目を大きくして、両手をグーにして差し出す格好を取った。 手錠するならしてください、とでも言うように。 「ーーーーそろそろ警察署に移動してもらおうか…… そうだーーーー…貴女が手にした青木先生のカードキーはーーー…どうやってお返ししたんですかーーー?」 澤田さんは時計を見た後、湯川さんの方を見て尋ねた。 入り口のドアの方に目をやると、事情を知っていた菅原さんが、遠慮がちにこちらを見ている。 澤田さんの署のーーー警察達が到着したのだろうか。 「ーーーー澪の車のーーー…ミラーに掛けておきました…… 付箋に『紺田君、研究室で寝てたからーーー寝せておいてね。疲れてると思うから』って書いてーーー… 澪は昔からーーー…考え事をする時ーーーいっつも車に行くんですーーーー だからあの人の遺体を隠してカードキーの無い澪なら必ずーーー…一旦駐車場に来ると思ったんですーーーー そしたら私の書いたメモを見てーーー紺田君が研究室で寝てる事も分かるしーーーカードキーも返せるとーーーそう思いました………」 湯川さんは説明をして、要の目も青木先生の目も見ようとはせず、少し離れた所に視線を落とした。 青木先生はきっと伊賀さんを殺した時と同じくーーー研究室に居たと決めつけた澤田さんの質問に首を縦に振ったのだろう。 それで湯川さんの付箋を思い出しーーー要が研究室で寝ていたと証言したに違いない。 「以心伝心ってヤツですかーーー… ーーーーさすが……マドンナ様ですね……」 澤田さんは冗談めいた口調で微笑みつつも、再び手錠を取り出して右手に持った。 マドンナーーーーー… ーーー湯川さんは確かに、マドンナだったのかも知れないーーー… 俺がイメージする、派手で、華やかなマドンナでは無いとしてもーーー湯川さんは人の心を掴んで離さないという意味でーーーマドンナだったのかも知れない。 津田先生に愛された故にーーー湯川さんの人生は狂ってしまった。 でも相反してーーー青木先生が湯川さんを忘れられなかった事がーーー湯川さんを救ったと言ってもいいーーーー。 湯川さんを好きになってしまった要もーーー存在する筈ない津田先生の亡霊から怯える湯川さんを支えていたーーーー 誰かを愛し愛される事がーーーこんなにも事件に深く関わりーーー影を落としつつも、一方では光を当てたーーーー
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