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要も今だと思ったのか、自分もホリデーフラペチーノを口に運んだ。
クリームが口についていると心配したのか、要はフラペチーノの入ったカップを置いてから、唇を舐めた。
「君達2人から見てーーーー
何かこの時間帯に怪しい人物や、不自然な様子の人物はいなかったかな?」
「あの…」
澤田さんの質問に被せる様に要が言った。
「……先に質問しても良いですか…?」
「どうぞ」
珍しく遠慮がちに尋ねた要に、澤田さんはにっこりと微笑んだ。
「なんで……
…俺たち2人にこんな事聞くんですか…?
ーーー他にもーーーその時間帯に大学にいた人ならいたと思いますけどーーー…」
要はやや反抗的な様子で澤田さんにそう告げた。
澤田さんは「そうか」と言って頬を人差し指で軽く掻いた。
「もちろん、君達以外の学生にも話を聞いているよ。
ただ青木先生がこの日ーーー君達が教室に残っておしゃべりをしていたと話をしてくれてね。
……遅い時間まで大学に居た君達なら…何か見たり聞いたりして無いかなと思ってね」
澤田さんに言われた要は納得したのか「なるほど…」と小さく頷いた。
確かにあの日俺と要は教室に居たが、何か物音を聞いたりとか、叫び声を聞いたり…おかしな人物を見かけたとかそういう事は無かった。
「ーーー残念ですけど俺も要もーーー怪しい人を見たり、怪しい音を聞いたりはしていません」
俺はその時を思い出しながら答えた。
あの日は教室を出る時も、帰り道でも、そういう経験はしなかった。
「ちなみに」
俺も要も、澤田さんの声に同時に顔を上げた。
「君達2人は、その時間帯ーーーー
午後12時から午後3時までーーー何してた?」
その質問に一気に緊張が走る。
澤田さんの目の奥に、さっきとは違う雰囲気が感じられた。
「アリバイ確認ーーーってわけじゃ無いし、君達を疑ってる訳じゃないんだけど、一応ね。
ーーーじゃあ、紺田君からーーー
9日のその時間帯何をしてたか、話してくれる?」
突然振られた要は珍しく表情に緊張を滲ませ、軽く咳払いをした。
「ーーー13時30頃に…大学の食堂で昼食を取ってから……課題が終わっていなかったので、研究室のパソコンで課題を進めていました…」
「うん、そうだね」
澤田さんの相槌に要は「え…?」と澤田さんを見つめた。
「研究室のカードキーに、紺田君と青木教授が居た履歴が残ってたよ」
要は既にそんなところまで調べられている事に驚いたのか、目をまんまるにしている。
「ーーーー青木先生が言ってたよ…『紺田君は課題を進めに来たって言うと思いますけど…僕が見た紺田君は机に顔を突っ伏して寝ていました』って…」
要はヤバいと思ったのか、顔を一瞬にして強張らせた。
どうやら、要が研究室で居眠りをしていたのは本当らしい……。
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