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「なんっっっじゃこりやぁぁぁッ!?!?」
「おーーーーー……!
いいよいいよ!!!
すげー、似合ってる!!!」
白い綿袋に包まれた要の姿を見て、俺は手をパチパチと叩いた。
横にいる同じ綿袋も、白いストッキングに覆われた手をぱちぱちと叩く仕草をする。
「めっっちゃ棒読み…!!!
え…お前の作ったキャラクターってコレ!?
想像以上に酷い……これ…なに…?
前は予想外に見えるけど……
…まずこのビジュアル酷くない!?!?」
要は綿袋ーーーー…正確には着ぐるみに覆われた体をぶんぶん揺すって喋っている。
ーーーーそんなに喋ると、疲れるぞ。
その中めちゃくちゃ暑いから。
「試験管。京帝大学工学部、オープンキャンパス専属キャラクター。
名前は『サイエン』と『スー』
…2人合わせて『サイエンス』
ちなみにお前はスーの方。
頭に、赤いリボンついてる」
俺は淡々と説明をし、要が来ているスーの着ぐるみの頭の方を指差した。
「試験管!?!?
きりたんぽじゃなくて!?!?」
要は実際に赤いリボンを触って確認しようとしているのか、白いストッキングに覆われた手で自分の着ぐるみの上を触った。
あ、リボンちゃんとさわれてる……
「うん、試験管」
俺は頷いた。
俺はこの着ぐるみが完成して直ぐ、工学部の生徒達に発表し、中に入ってオープンキャンパスを盛り上げてくれるよう頼んだ。
が…ーーーー俺の予想に反して、誰一人としてこの中には入りたがらなかった。
「葛西先生ホントにヤバい!」
と、叫んだ生徒までいた。
それで俺は飲んでばかりで金欠だと嘆いていた要に声をかけて、この中にオープンキャンパスの間、入ってもらう事にしたのだ。
「ーーーーお前正気か!?
コレで工学部の知名度が上がるワケ!?
悪い方に鰻登りだよ!!!
すっげぇダセェ着ぐるみが2体うろついてるって!!!」
要は既に息を切らしている。
経費削減しすぎて…通気性悪いんだよな…
そこは申し訳ない…
「うるさいな……
そんな事言ったら給料あげないぞーーーー!
キャバクラやら、スナックやら行き過ぎて……お金無いって騒いでたくせにーーー!」
「う゛………」
俺の横でサイエンは手を口元にあてて「あらあら」みたいなリアクションを取る。
サイエンの方は結構乗り気なのかも知れない。
「……いいか…要…!…今から8時間……
…ちゃんとスーでいろよ…
でないと本当にお金払わないからな…!
オープンキャンパス参加者が来たら両手で手を振ってーーーー
写真撮ってくださいって言われたらちゃんと応じてーーー
サインくださいって言われたら……ちゃんと書くんだぞ!!!」
「そんなヤツいるかぁ!!!
芸能人じゃあるまいし!!!」
俺の横で大きく体を揺らし頷くサイエンとは対照的に要は痛烈なツッコミを入れる。
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