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この人は本当ーーー最後まで素直じゃ無い。 素直じゃ無いと言うかーーーあまのじゃくというかーーー強がりなのかも知れない。 「ーーーー…湯川さんは爬虫類が好きなんすよ… 『何を考えているか分からない…それが可愛いし、惹きつけられる』だそうです……… 先生って頭良いんですよね…? そもそもーーーーレオなんて息子につけられたら……俺がフラれたも同然じゃないっすか…… レオって…きっとーーー澪緒(レオ)ですよ…」 要の言葉に、着ぐるみの中の青木先生は息を飲む。 俺は2人のやりとりに、少しだけ目を伏せた。 要の言葉は切なくーーーそれでいて…嘘の無い真っ直ぐな言葉だったからだ。 やっぱり要の方がーーー …恋愛に関しては一枚上手かなーーー… 「あーーーあ! ーーーモタモタしてるなら俺が貰っちゃおうかな!!! 湯川さんも、レオ君も!!!」 「え!!?ちょっと!?急に!?」  青木先生は驚いた様に要の方に体を向けた。 振り返った衝撃で、サイエンの着ぐるみの上の方がゆらゆら揺れている。 「ーーーーというわけでトイレ行ってきます…! ーーーいくらイケメンの俺でもーーー乱れた髪型で汗だくでプロポーズは嫌なんで… 身だしなみチェックしてきまーす!」 要はリボンをつけたスーの姿のまま、スタスタと歩いて大学のトイレへ向かう。 戸惑いながらも要を引き止められず、青木先生は要を見送る形をとる。 「ーーー本当に何考えてるか分かんないヤツだな…紺田はーーーー」 サイエンの姿のまま腕を組んで呟いた青木先生を見て、俺はつい声をあげて笑ってしまった。 「アハハ……!!! ……要も先生の事…… …同じ様にに言ってましたよ…? ほんっと何考えてるかーーーー ーー分かったもんじゃねぇなーって」 青木先生は「聞き捨てならん!」とでも言わんばかりに、俺の方に身を乗り出してきた。 「俺が……? ーーーアイツにだけは言われたくないな…」 呟いた青木先生の後ろにいる人物と目が合い、俺はつい微笑んでしまった。 あの日ーーー偶然大学で会った時と同じ様に。 「ーーーまぁ…要はーーーー ーー人の本心を見抜く能力に関してはーーー 先生より…ずっと優れている事は確かですーーー」 俺はそう告げ、青木先生に後ろを見るように視線を送る。 ーーー今度こそお幸せにーーーー 結局ーー要も俺もーーー憧れのマドンナを手に入れる事は叶いませんでしたーーーー 「ーーーー? ーーーえ?…どういうーーー」 青木先生は俺の視線に気付き振り返ると、そのまま動かなくなった。 「紺田君ーーーーー?」 「!?」 「何ーーー?話ってーーーー??? ーーーーライン見て、来ちゃった」 「!?!?」 「まさか紺田君がサイエンだとは思わなかったなぁ! ーーーーすごいサプライズ! ーーーーで、なんなの??? 今ここでしか言えない話が、あるんでしょーーーー…」 湯川さんは話してる途中で、要の仕組んだトリックに気づいたらしく、言葉を飲み込んだ。 なんだよ、あのヤロウ…… 最後まで……カッコいい事しやがる……… 湯川さんはサイエンをじっと見つめたあと、正面からぎゅうと抱きしめた。 サイエンは苦しそうに、きりたんぽのような身体を揺らして、手足をわたわたさせる。 「紺田君ーーーー相変わらず優しいねーーー ーーーーーおかえりーーー…… ーーーー…本当にずっとーーーーー ーーーずーーーっと…ありがとうーーー… 私をレオに会わせてくれてーーー… やっと訪れた平穏な幸せもーーー あの子の笑顔もーーーー全部が貴方から貰ったものですーーーーーー 本当にーーーーありがとうーーーーー」 サイエンは抱きしめられて数秒もがき、黙ったまま、動かなくなった。
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