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「そんなに堅苦しくなくていいんだよ。まひるさんだったか、それできみはいつウチに来るんだね?」
「えっ、ウチに……?」
「ああ、紬の嫁ということはウチに一緒に住んでくれるんだろう?いやあ、やはり家内と2人だけいうのは気楽だが寂しくてねえ!」
「あの……?えっ!?」
紬さんからは何も聞いていないけど、彼は結婚した後このおじいさんと同居する予定なの?
どう返事をしたらいいのか考えていると、おじいさんはハッとしたようにドレッサーの方を見つめた。
彼の驚いた様子に、何かびっくりするようなものがあったかなとそちらに目を向ける。
「あれは……”仁科”の?」
目を丸くしたおじいさんに尋ねられて、そう言えばさっき小説を読もうと取り出したことを思い出す。
「あ、はい」
短く返事すると、おじいさんの目の色が変わった。
「きみはどの作品が好きなんだい?」
「えっ?」
「仁科の作品だよ!俺のお勧めはもちろん『可惜夜の月』だが、『常闇の街』も捨てがたい!」
その熱い言葉に、同志の気配を感じて思わず頬を緩める。
おじいさん、まさかの仁科先生のファン!?
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