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それにテンションが上がった私は先ほどとは逆に、おじいさんの掌をきゅっと握りしめた。
「いいですよねー、『常闇』!
私も大好きです!」
笑顔で同意すると、おじいさんはニコニコして言葉を続けた。
「いやあ、本当に紬はいい嫁を見つけてくれた!ウチにはまだあれの隠した原稿がたくさん眠ってるんだ。
きみ、今日からでもウチに住みなさい!
ウチにはお手伝いもいるから家事もしなくていい!」
私はおじいさんの掌を握ったまま「うん?」と首を傾げる。
隠した原稿って何だろう?
おじいさんは小説家だったりするのかな。
おじいさんはご機嫌よくうんうん、と何度も頷く。
「いやあ良かった良かった、こんなに早くきみを説得できるとはな!じゃあ、早速紬にもこのことを……」
おじいさんがそう言いかけた時だった。
バン、という音とともに突然扉が開く。
「そこで何してるの?爺さん」
眉を吊り上げ、顔を引き攣らせながら入ってきたのは紬さんだった。
彼が着ているのは僅かに紫色が混ざった、真珠のような光沢を帯びたタキシード。
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