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緩くウェーブを描く前髪は根本から立ち上がって後ろへと撫でつけられており、髪全体がスタイリング剤で風呂上がりのように艶めいていた。
紬さんはそのまま、部屋に置かれていたロココ調の白いカウチソファーへと座って足を組む。すこし落ち着いた頃を見計らい、私は彼に声をかけた。
「あの、紬さん。
さっきの人は紬さんのおじい様ですよね?」
そう尋ねると、紬さんは眉をしかめたままソファの背もたれに凭れかかって天井を見上げた。
そのままたっぷりの間を置いて、短く答える。
「そうだよ。で、俺側の主賓」
「えっ?」
2人で話し合って決めた、今日の披露宴の規模は当初40人とかなりこじんまりしたもの。
しかし、紬さんの親族の偉い人が急に出席することになり、その人の関係で招待客は当初の3倍以上に跳ね上がった。
私がそれをプレッシャーに感じると思ったのか、紬さんはどんな人を招待しているのか今日まで秘密にしていたらしい。
「あのおじい様は有名な方なんですか?」
「…………そういうことに、なるのかな」
彼は認めたくない、とでも言いたげに大きく息を吸って天井に向かって吐いた。
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