2人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
先月、高卒から10年勤めていた会社を辞めた。
ボーナス査定のための面談の時に、きちんと話を聞いたうえで、次年度の自己課題を問われた最後に、笑顔で退職を申し出た。
会社がブラックだったとか、人間関係が悪かったとか、そういったことは一切なかった。ただ、入社して仕事を覚え始めたころからずっと燻ぶっていたものが弾けたのだ。
『俺は何のために働いているのだろう』
なんてことはない。
社会人になり誰しもが思うようなことだ。
―――でもそれが我慢できなかった。
朝8時に家を出て、車で20分弱掛けて出社。事務所のカギを開けて、空調をつけ、少し掃除やら書類整理やらをしたのち、9時前に続々と出勤してくる同僚と挨拶を交わしながら、一緒に出勤のスキャンをする。
別部署から回ってくる書類に目を通し検閲印を押印し、実行部署にファックスで流す。コーヒーを啜りながら、決められたフォーマットに決められた数字を打ち込んでいく。
夜も19時になれば退勤をして、途中スーパーに寄りまた20分ほどかけて帰宅をする。給料天引きで三割を負担してくれる、家賃六万のアパートだ。
帰ったらシャワーを浴びて、テレビを付けながら、スーパーで買ったお惣菜をつまみに、安い発泡酒を飲む。
程よい時間になったらベッドに入り、布団にくるまって寝る、
月曜日から金曜日まで、たまに土曜日も出勤して、これの繰り返し。
最初のコメントを投稿しよう!