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高円寺の駅前の広場では、夜中も人がたむろしている。類が友を呼ぶように、似たような奴らが自然と集まってくる。今夜も、ギターの音色とともに下手くそな歌を披露する若者の声が響いていた。
俺を見つけた電話の相手は指笛を鳴らしてみせた。ビールを持つ手を軽く上げ、彼の隣に腰をかける。花壇の縁は硬くてケツが痛くなりそうだった。
「アイラビュー。来てくれて嬉しいよタナカくん」
「そりゃどうも。アキヒロくんが寂しいときはいつでも駆けつけるぜ」
ヒュー、男前。高い声でそう言ったアキヒロくんは、目を細めてシワだらけの顔で笑った。俺も笑った。
中背中肉のアラフォー男が男前なもんか。
歩いているうちにすっかりぬるくなってしまった缶ビールを開ける。隣で煙草の煙を吐いたアキヒロくんが物欲しそうにこちらを見やる。
「美味そうなもん持ってんねぇ」
「あんたも飲みたいならどこか入るか?この前他の奴からうまい店を教えてもらったんだ」
煙草を咥えて彼は肩を竦めた。
「金がないからなあ、今」
「俺もだよ、奇遇だな。この前競馬に全て使っちまって今月は普通の生活も厳しい」
「ビールは飲んでるのに?」
「酒は俺の安定剤だぜ。常に手元になきゃ生きてられん」
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