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震える手指ではシートベルトが外しづらかった。車から降りると、男が膝立ちで小さい女の子の状態を確かめていた。
「す、すみません……。本当に俺はなんてことを……。その、大丈夫ですか、とりあえず警察を」
「大丈夫なわけあるか!警察を呼ぶより、まずはうちの娘の怪我が最優先でしょうよ。とにかく慰謝料を払ってもらおうか、……もしかしてお前は田仲じゃないか?」
先程までの剣幕が嘘のように、けろりとした様子で話しかけられた。
気が動転していて相手の顔など気にしていなかった。右往左往していた視線を男に向ける。
ひょろりとした痩せ気味の体型に、面長な顔形。ツンと上を向いている小ぶりな鼻と、目ぢからの強い、大きく開かれた目。高校時代の友人を彷彿とさせた。
「加藤か」と問いかける。
「そうだよ、久しぶりだな。あれだけ苦楽を共にした仲だっていうのに、卒業したらちっとも連絡取らなくなっちまったよな」
加藤は親しげに肩を組んできた。俺も知己との再会を喜びたかったが、それどころではなかった。いや、娘が事故に遭ったというのにこのような態度をとるこいつの方がおかしいのだ。
「いや、お前、その子は大丈夫なのか?いくら友人だとしても俺はお前の娘を傷つけてしまったんだ、とりあえず警察を呼ぼう」
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