下衆と天使の珍道中

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「お前に言われたかねえよ!給料全部競馬か酒につぎ込んでる童貞アル中野郎がよォ!」 「だから童貞じゃねえっつうの!お前みたいな、自分の子どもを使って人から金をむしり取ってる奴よりマシだろ!」 「どっちもクズに変わりはねえだろ!俺もクズだけどお前もクズ!クズがクズに偉そうに説教垂れるんじゃねえよクズ!」 「働きもしない奴が懸命に金稼いでる奴に説教するのは、そりゃあお門違いってやつだろ!仕事見つけてからもの言えよクソニート!」  恥も外聞もない、醜い罵りあいだった。たとえ酔っていて怒り狂っていたとしても、手を出すのだけは我慢した。互いの脳内でボコるだけになんとか留めたのである。 しかし、ここは居酒屋。他の客の迷惑になるような行為は禁止事項だ。喧嘩はよそでやってくれと、俺たちは店から追い出された。 俺たちは一ヶ月の出禁を言い渡された。夜風に当たり、次第に頭が冷えてくる。 「もう一件寄って飲み直すか」加藤も同じことを考えていたようである。 「そうだな。次は突然胸ぐらを掴んできたりするなよ」 「お前こそ、人がやっとの思いで告白してるっていうのに無神経なこと言って傷つけないでくれ」 「正論を言ったまでだと思うが。……そう睨むなって」  横からの熱い(?)視線を躱しながら次の店へと向かった。夜はまだ、これからである。
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