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言い淀んでいると、朱音先輩が疑問の目を向けてくる。ここまで悩んでいるような姿を見せておいて、何も相談しないというのは、逆に先輩にも心配をかけてしまう。
「あの、フルートの一年生って、僕だけなのかなぁって」
結果、僕はめちゃくちゃに遠回しな言い方でしか、自分の悩みを伝えられなかった。
「ああ」
周囲を見渡した朱音先輩は、なるほどと言わんばかりに頷いた。僕と同じように楽器を用意する新一年生。だがその中にフルートを持っている部員は誰もいない。トランペット、サックス、クラリネット、パーカッション、それになんと、今年はファゴットとテューバの経験者が入ってきて、バスパートの先輩はウハウハだ。
「うちの高校、四月いっぱいは体験入部期間だから、来週には初心者の子が見学に来始めると思うのよねー。経験者で高校でも吹奏楽やりたいって子は、ここにいる新入生みたいにもう部活決めてるはずだし、これからは増えるとしても初心者の子かな」
そういう朱音先輩の表情はすぐれない。きっと、僕の悩みがフルートパートの層の薄さだと思ったのだろう。当然、僕もそれはどうにかしないとと思っていた。
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