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現在の部員は、新入生を除くと三年生が一八人と、二年生が二一人。その中でフルートを吹いているのは朱音先輩だけ。なぜそんなにバランスが悪いのかというと、なんでも昨年の冬、顧問と喧嘩して辞めたフルートの先輩がふたりもいたらしい。
正直、この人数でフルートが二本というのは厳しい。できれば経験者がもうふたり、ほしいところだ。そう、――先輩の負担を減らせるだけの、実力ある経験者が。
脳裏をよぎるのは当然、彼の後ろ姿だった。
「そんなに心配なら、フーマにも手伝ってもらおうかなー」
「へ?」
ニコニコ顔で朱音先輩が取り出したのは、三〇枚ほどの紙の束だった。
「先輩、これって……」
差し出されたそれを反射的に受け取る。
「もちろん、GWにある新入生歓迎コンサートのチラシ! こいつで気になるあの子も勧誘しちゃいなさい!」
「いや、別に気になる子なんて……ていうかこれ、僕は歓迎される側じゃないですか!」
「なーに言ってんの。曲目見てみなさい」
曲目? と思い、持たされたチラシに目を落とす、と
「え、これ……」
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