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朝は七時から始業までの一時間半、昼は昼食後の三十分、音を長く伸ばすロングト―ンや音階――スケールの練習を一通りこなすのは中学からの日課だ。
「……」
まあ、どれだけ練習しても本番で発揮できないんじゃ意味はないけれど。
「はあ。それにしても、自分の仲間は自分で、かー」
沈んだ思考を前向きにするためにも、今すべきことを口に出す。
できれば男子がいい。話しやすいし、何より吹奏楽部は常に男子を求めている。意外と力仕事も多いし。しかし、フルートを吹く男子はかなり少ない。中学の時もフルートパートの男子は僕だけだったし、コンクールの時に他校を見ても、何校かにひとりいるかどうかという感じだった。
音楽の授業でクラスの友人が僕に向けた視線の通り、フルートは女性の楽器、というイメージはかなり根強い。そしてそのイメージも、否定できるものばかりじゃない。
フルートは見た目も音色も、綺麗で繊細。それは事実。
でも吹奏楽では、その繊細な音色を損なうことなく、ほかの楽器に埋もれないように演奏する必要がある。ほかの楽器と違い、息の大半を楽器の外に逃がす分、バカみたいな肺活量も必要だ。
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