タイムリミット

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昭和35年。この地にあった何の変哲もない井戸。恐らく主に農作業時に使用していたであろう井戸。そこに二人の幼い姉妹が落ちて亡くなった悲しい事故。それが発端だったんだ。生まれ変わりを信じるアカは、二人の友人を誘い井戸に落とした。いずれ自分の糧となる骨を作るために。でもその骨は悲しみに暮れる両親の手で引き揚げられた。大栗さんの友達よりちゃんも。 そこでアカは考えたんだ。妹の骨があればいいと。不思議な事に、自分の思考の方が妹よりも早い。それを利用したんだ。そして器。生まれ変わりたい年代の人の器が必要だと言った。それは・・・俺だ・・・でも待てよ・・ 「どうやって・・・どうやって友達を井戸に落としたんだ?お前は妹の身体に寄生してるんだろ?それに、あの井戸には鉄性の重い蓋が乗っていたはず。どうやってどかしたんだ?」 ~え?ああ、その事?私も不思議なんだけどね。夕方ぐらいになると、私は舞子の意識と入れ替わる事が出来たんだ。それに私が行く時は、その井戸に蓋なんてされてなかったよ。それと寄生っていう言い方やめてくれる?何だか虫みたい~ 「あ、ああ。すまん。でも、蓋がされてなかった?」 ~うん。流石にあの重い蓋は妹の力じゃどかせないからね~ 「誰がどかしたんだ?」 ~勝手な大人達~ 「勝手な大人達?どう言う事だ?」 ~勝手な事をしてるくせに、謝罪の手紙なんかを入れている・・矛盾してるよね。でもそのお陰で夕方は井戸に蓋がない事と、舞子の身体を乗っ取る事が出来るって分かった私はいつも夕方に行ってた・・私ね、不思議だなって思う事があるの~ 「不思議な事?」 ~うん。どうしてみんな、自分の身体がちゃんとあるのに生まれ変わりたいなんて思うんだろうってね~ 「・・・・・・」 ~ちゃんと身体があって、自分が自分でいられて、周りの人達にちゃんと一人の人間として認めてもらえるのに、ゆうちゃんは犬になりたいって言うし、幸恵ちゃんはウサギになりたいって・・・どうして自分じゃ駄目なんだろう?~ 「・・・ないものねだりなんじゃないか?人は誰でも欲を持っている。人より優れたい。可愛くなりたい。金持ちになりたい。強くなりたい・・・いくらでも欲は出て来る。自分にないものを求めるのは人として当たり前の事だし、ソレを手に入れるには頑張って努力すればいいだけの話だが・・それは時間がかかるし中々難しい」 ~そうだね。私もそう思うよ・・・長い間待ったもん。でも、その努力が今、報われるの~ ハッとした俺は時計を見た。 午前零時。日付が変わった。 時計から視線をアカへ向けた俺は驚いた。
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