疑問

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疑問

酷い夜を過ごし、バイトで疲れた体を癒せなかった俺は重い身体と頭を抱えながら大学へと行った。 教室に入り席に着くと、待ってたかのように杉本が走り寄り隣に座る。 「よう!おはようさん!」 「ああ・・・」 「何だ?元気ないな。あ、分かった。バイトだろ。だから言ったろ?あそこのコンビニは激混みするからやめとけって。なのにお前は「時給が高いからいいんだ」なんて金に釣られて・・」 「そんなんじゃないんだ」 「あ?」 「そんなんじゃないんだよ。バイトで疲れてるのは間違いない。でもそんなもの一晩寝れば大丈夫なんだ」 「じゃあ何でそんなに元気ないんだよ。酷い隈も出来てるぜ?」 「あそこ何人死んでる?」 「は?」 「俺の部屋で何人死んでるのか知ってるか?」 「何人って・・・おいおいやめてくれよ。朝から怖いのは勘弁だ・・・もしかして出たのか?」 そう言いながら杉本は両手を前に出し、手首を曲げだらりと前に垂らす。 「ああ」 「マジで?!」 杉本の声が教室中に響き渡り、他の学生たちの視線が集中する。 「マジかよ。確かあそこで死んだのは俺達ぐらいの男だろ?クローゼットで首釣ったって言う」 杉本は極端に声を潜め話した。 「ああ。ソイツも出た。でもそれはいいんだ。最初から聞いてた事だからな。なるべくなら出ては欲しくないがしょうがない。問題は他の奴だ」 「他の奴?」 「子供だ。それも二人」 「子供・・・」 俺は、アカの事と昨晩出た首だけの子供の事を話して聞かせた。 「それヤバくないか?」 杉本の顔から血の気が失せていく。袖まくりしている腕は鳥肌がたっているのが目に見えて分かる。 「不動産屋は子供の事は言ってなかったのか?」 「言ってない」 「あの辺りは地元じゃないし詳しくは知らないけど、親父が言うには元々更地だったらしいぜ」 「更地?」 「ああ。東京の駅近の場所であれだけ広い場所が更地になってるのは珍しいって言ってたな」 「・・・確かに、俺も最初見た時不思議だったんだよ。広い敷地にあのアパートだけがぽつんと建ってるだろ?周りは何もない。公園にもなってない。少し離れた所から住宅が建ってたり公園やコンビニがあったりするんだ」 「ああ・・そうだな」 「俺思ったんだけど、あの土地・・・曰くがある土地なんじゃないか?だから周りの人はあそこの土地には建物を建てない」 「じゃあ何で大家さんは建てたんだ?」 「分からん」 「聞いてみろよ」 「そんなこと聞けるかよ。ここは曰くがある土地だからみんな家を建てないんですか?って聞くのか?」 引っ越しで一番最初に気になるのはご近所の人達。何処にでもおかしな奴はいるが、大家の日下部をはじめアパートの住民全員よく気にかけてくれる。(瞳を除いては)こんな事で、良好な関係を駄目にしたくはない。 「まぁそうか。下手すりゃクレーム付けてるようなもんだからな。じゃあ図書館にでも行って調べてみるって言うのはどうだ?図書館なら地図とか古い資料なんかがありそうじゃん」 「・・・成る程」 思ってもいない杉本のアイデアで、俺達は大学が終わると近くの図書館へと足を運ぶ事となった。
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