契約

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不動産屋に戻った俺は、早速あの事故物件の契約を済ませる。 即入居可能と言う事だったが、準備やその他いろいろな事を済ませている内に契約から二週間後の入居となってしまった。 友人(杉本)に頼んで何とか引っ越しを済ませた俺は、手伝ってくれたお礼にと昼飯を奢るためファミレスに来ていた。 杉本とは大学受験の時に知り合い、初対面にもかかわらず何故か馬が合い仲良くなった。東京生まれ東京育ちの杉本は、実家から大学に通えるという何とも羨ましい環境だ。 「助かったよ。引っ越し業者頼むと金がかかるからさ」 「引っ越し業者頼むほどじゃないだろ。ベッドと机とソファーは買った店で持ってきてくれるし、他は段ボールが四つだぜ?軽トラ一台で事が足りる」 「親父さんにもよく言っといてよ。親父さんの軽トラなんだから」 「ああ」 「でもさ、本当にあそこ事故物件なのか?」 「そうみたいだな」 「大丈夫かよ」 「大丈夫って?」 「ほら・・幽霊とか」 「お前そんなの信じてんの?」 「いや、信じてるって訳じゃないけど、いないって言う証拠もないだろ?」 「まぁな」 「取り憑かれたりして」 「何で俺に取り憑くんだよ。全然知らない奴だぜ?」 「お前は知らなくても、幽霊からしたら取り憑くかもしれないだろ?自殺した人に何があったのかは知らないけど、何か怨みがあって死んだんならお前みたいな能天気な奴は見ていてイライラするかもしれないからな」 「能天気って何だよ。第一幽霊なんているかどうか分からないし、いたとしても別に気にしないよ。どうせ住むのは大学通ってる間だけだし、何とかなる」 「強気だな。同じアパートの住民はどんな人なんだ?」 「まだ会った事ないんだけど、不動産屋の話しじゃあのアパートに三世帯しか入ってないらしい。一人は40代の男。一人は80代のお婆ちゃん。もう一人は若いOL」 「おお!若いOL!いいじゃんそれ」 口に入れようとしたエビフライを皿の上に落としながら声を上げる。 「何がいいじゃんだよ。まだ会った事ないし、メッチャブスかもしれないじゃん」 「あ~それじゃあ残念だな」 そう言って落としたエビフライを口に放り込んだ。 「な」 「でもたった三人なら気楽でいい」 「まぁな」 食事を済ませ用事があるという杉本と別れた俺はアパートへと戻った。
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