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何処からか軽快な音楽が聞こえてくる。
これは確か・・・必殺仕事人の曲・・・誰だよ。時代劇大音量で観てる奴・・・
繰り返される曲。しかも同じフレーズの所ばかり・・・
「はっ!!」
その曲が、アラームの曲として自分がセットしたものだと理解した瞬間目が覚め飛び起きた。
壮大なトランペットの音は今は耳障りにしか聞こえない。
アラームを止め時間を確認する。10時35分。
「うわ~朝からの講義完璧遅刻じゃん・・・もういいや」
絶望と面倒臭さが勝ち、またモソモソとベッドに横になる。
「ん?」
クローゼットがまた少し開いている。
「・・・・・・・」
事故物件と分かったうえで住み始めたとはいえ、このクローゼットのお陰で色々振り回されているような気になった俺は反対方向を向き知らん顔をした。
(知らん。今日はとことん寝る)
「・・・・・・・」
そう思って見たもののやはり気になる。
俺は大きく息を吐くと、昨日よりは少しはマシになった体を起こしベッドから降りるとクローゼットに近づいて行った。
果たして今度は誰がいるのか。
扉に指をかけゆっくりと開ける。
~おはよう。団子にぃ~
笑顔を見せ、いつものように段ボールに座り足をぶらぶらさせながらアカは言った。
「お前か・・・」
俺はその場に崩れるように座り込んだ。
~どうしたの?凄く疲れてるようだよ?~
「・・ああ・・疲れてる」
~お仕事大変なの?~
「いや・・仕事じゃない・・」
~お仕事じゃないの?じゃあ何でそんなに疲れてるの?~
眉を寄せ心配そうに俺を覗き込む。サラサラとした髪がアカの顔にかかる。
「ふぅ~・・大丈夫だ。それよりお前また来たんだな」
~うん。だってこの前話が途中になっちゃったからね~
「話?」
~うん。団子にぃに、お願い事があるって話~
「・・・ああ、そう言えばそんなこと言ってたな。お願い事って何だ?俺にもできる事と出来ない事があるぞ」
~大丈夫だよ。団子にぃはきっとやってくれる~
あどけない笑顔を見せながら言うアカ。
「・・・・・・」
~あのね、骨を見つけて欲しいんだ~
「は?ほね?骨って体の骨か?」
~それ以外何があるの?~
「いや、知らんけど。何で骨なんだ?見つけて欲しいってどう言う事だ?」
また訳の分からない問題に、頭が混乱してくる。
~私の友達の骨なんだ。この部屋の中にある~
「友達の骨?!この部屋に?!」
~団子にぃそんなに大きな声出さないでよ~
アカは自分の耳を両手で塞ぎ顔をしかめる。
「ああすまん・・・いやいや、大声出すだろ。骨がこの部屋に埋まってるって言ってるんだぞ?大変な事だ。それに、その骨を見つけてどうするんだ?」
~天国に行けるようにしてあげるの~
「天国に?・・・供養という事か」
~くよう?ん~まぁそんな感じかな。お願いできる?~
「・・・・もし断ったら?」
~・・・・・~
アカは俺の顔を黙ってジッと見る。
暫くして
〜多分断らないよ。と言うか、断れない〜
「断れない?」
〜うん。じゃ、お願いね〜
可愛らしい笑顔を見せたアカはクローゼットの扉をパタンと閉めた。
「あっおい!」
急いで扉を開けるが、そこにはもうアカの姿はなかった。
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