タイムリミット

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11時35分。明日まで25分。 ~そう。団子にぃが封印しているものじゃないよ。骨の記憶~ アカの顔つきが変わっていく。あどけない顔をしていた顔が、時間を早送りしたかのように大人びていく。 「アカ・・・お前・・・」 ~骨にはその人の記憶が残ってる。良い事も悪い事も。でも多分は悪い事の方が多いかな・・だからそんな記憶を見せられた母体は叫び声をあげちゃうんだ。団子にぃ。お前は何者だって聞いたよね?教えてあげる。私は日下部ヨキ。カタカナでヨキって言うの。私は妹・・舞子と身体がくっついて産まれてきた。妹の左胸に私の顔がある~ 「は?・・・」 ~私は喋る事も考える事も出来る。なのに、みんな私を隠したがる~ 「ちょ、ちょっと待ってくれ。妹の左胸にアカの顔があるって言ったのか」 ~うん~ 「だって前に、私の後を妹がついて来るって・・・」 ~そうだよ。舞子は、いつも私が先に考えた事を後になって同じ事するの。私が笑うと舞子が遅れて笑う。私が泣くと舞子が遅れて泣く。どうしてそうなのかは知らないけど・・私はお姉ちゃんだからね。きっと神様が、身体がない私を可哀想だと思って舞子より先に感情を表現できるようにしてくれたんだと思う~ 結合双生児・・・俗に言うシャム双生児と言われる子供がいるという事は聞いた事がある。身体や頭が結合した状態で産まれる子供。 アカの場合は、本来双子で産まれるはずだったが妹に吸収され顔だけ残ったという事なのか・・・ 「テレビも観れないって言ってたのは?」 ~テレビはお母さん達がいる部屋にあるからね。お父さんが私の事を嫌ってるんだ。気味の悪い顔を見せるなって。だから観れない。いつも舞子の服の中からテレビの音を聞いていた。勉強は好きだったから、舞子が勉強する時はいつも裸になってもらって私が教えてた。私は頭がいいからね~ ニコリと笑顔になり得意げに言う。 11時45分。明日まで15分。 ~だから考えたんだ。どうして頭のいい私が身体を持って生まれてこなかったのか。どうして舞子なのか。私は長い間苦しんだ。でもね、そんな時面白い本に出会ったの~ 「本?」 ~うん。輪廻転生って言う本。人は生まれ変わる事が出来るんだって。私は生まれ変わりたいんだ。舞子の身体に寄生するように生きるのではなく。私の身体として。私自身として~    今俺の目の前にいるアカは。もう子供のアカではなかった。俺と同じぐらいの年齢だろうか。輪郭や骨格がしっかりとした大人。可愛らしい顔から凛とした綺麗な女性になっている。 11時55分。日付が変わるまで残り5分。 ~これが私の理想の自分。こんな大人になりたかったの。どう?綺麗でしょ?~ アカはゆっくりと立ち上がり俺と同じ目線で俺を見る。 ~その本に書いてあったんだけどね。生まれ変わるっていうのはとても難しいんだって。難しいと言ってもね、生きてるうちにいい事しないと生まれ変われないとか、そう言うんじゃなくてね。準備が難しいんだ~ 「準備?」 ~うん。色々集めなくちゃいけない物がある。それは二つあって、まず自分の身体を作る骨~ 「・・・骨」 俺は、床に置かれている骨をくるんだ新聞紙を見た。 ~団子にぃが掘り起こしてくれた骨は、私の妹の骨。全部ではなさそうだけど・・ま、足りるでしょ~ そう言って小さく肩をすくめる。 「もう一つは・・・」 ~もう一つ?うん。それはね。新しい器~ 「新しい器?」 ~そう。自分が生まれ変わりたい年代の人の器が必要なんだ~ 11時57分。明日まであと3分。 「それって・・まさか・・」 馬鹿な俺は、ここでようやく全てが分かった。
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