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クローゼットから出られないはずのアカがゆっくりと歩き出し外に出たのだ。
~団子にぃはそこじゃなくて、クローゼットの中に入ってくれる?~
「え?」
~危ないから、クローゼットの中に入っててほしいんだ。怪我でもしたら大変だからね。あ、それと絶対に口を開けちゃいけないよ~
「怪我って・・そんなに危険な事なのか?」
アカは嫌な笑いを口元に浮かべると
~早く入って~
とだけ言う。大人になったアカには、有無を言わせないただならぬ雰囲気を持っていた。
「・・・分かった」
どうして素直に従ったのか。後になって考えてもよく分からない。
クローゼットの方へと歩きかけた時、携帯が鳴った。
「ちょっと待ってくれ」
俺はテーブルの上にある携帯を取り電話に出た。
「あ、御手洗!」
「杉本⁉︎どうしたんだよ。散々お前の事探したんだぞ?昨日のお前ちょっと変・・」
「いいから!!今すぐそこから逃げろ!!」
「は?」
「早く!!逃げろ!!頼む!早く!!」
「な、何?!」
「訳は後で話すから!言うこと聞いてくれ!!早く逃げろ!!」
「わ、分かっ・・・・」
杉本の尋常じゃない勢いに負け、戸惑いながらも俺はクローゼットではなく玄関の方へと行こうとした時
~何処に行くの?~
部屋中に響き渡るアカの声。
振り返るとアカが俺の真後ろに立っている。そのひょろりとした両腕と両足が少しおかしな形に盛り上がっている。よく見るとそこには子供の顔があった。子供の顔が肉腫の様に浮き上がっているのだ。
「な・・・」
その浮き上がった子供の顔はとても悲しそうな顔をしていたり、涙を流し泣いている顔もある。声は聞こえないが、大きな口を開け顔中皺だらけにしている。
咄嗟に、井戸に落ちて死んだ子供達だと俺は思った。
~どうしたの?団子にぃ~
アカは、俺をあざ笑うかのように裂けんばかりに口を横にニィっと伸ばし笑い言った。
「あ・・あ・・」
携帯からは以前、杉本の「逃げろ!」という声が聞こえている。
逃げたくても、足は小刻みに震え力が入らず体は金縛りにあったかのように動かない。
~しょうがないな。ちょっと早いけど始めようか~
そう言ったアカは俺に近づいて来た。
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