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「・・・・・」
~・・・・・~
カーテンから漏れる細い月の灯りで薄っすらと見えるクローゼットの中。まだ開封していない段ボールの上に足をぶらつかせ座る一人の女の子がいた。
薄暗くてよく分からないが、おかっぱ頭で半袖にプリーツのスカートを履いた女の子が驚いた表情で俺を見上げている。
そのあどけない表情は可愛らしく年齢は・・小学校低学年位だろうか。
「あ・・・は?」
~あ・・・は?~
女の子も俺と同じ反応をする。
「お前誰だ?」
~おじさん誰?~
お互いに質問しあう。
「いや、お前に言ってるんだよ。何でこんな所にいるんだ?」
~私?私は今友達とかくれんぼしてるの。おじさんここに住んでるの?~
「ああ住んでる」
~え~?!こんな汚い所に住んでるの?~
可愛い顔をクシャりと歪ませ言う。
「汚いって・・まだ片付けが終わってないだけだ。それよりお前、こんな時間に友達とかくれんぼって・・・今何時だと思ってるんだ?夜の二時だぞ?」
~ええっ!!夜の二時?!~
女の子は驚き立ち上がると、クローゼットの中から飛び出そうとした。
その瞬間、見えない壁にぶち当たったような衝撃の後女の子は後ろに跳ね飛ばされた。
~いった~!!~
顔を押さえうずくまる女の子。
「お、おい大丈夫か?」
女の子を心配した俺は、直ぐにしゃがみ込み女の子の顔を覗き込んだ。
~あっ!!血!血が出てる!~
手のひらに付いた鼻血を見た女の子は驚き泣きそうな顔をした。
「鼻血だから大丈夫だ。それより今のなんだ?ここに何かあるのか?」
俺は女の子がぶつかった場所に手を伸ばし触るが何も障害物のような物はない。
「何もない・・・お前何にぶつかったんだよ」
~知らない~
そう言いながら何度も手で鼻を拭う。お陰で幾筋もの鼻血の線が頬に伸びてしまった。
「あ~血だらけだ。ちょっと待ってろ。ティッシュ持って来るから」
俺は部屋にあったティッシュを持ち女の子に渡した。
受け取った女の子は両方の鼻の穴にティッシュを詰め
~友達帰っちゃったのかな~
と、もごもごと話す。
「そりゃそうだろう。夜中だからな。それよりお前コッチに手を伸ばして見ろ」
~手?~
女の子は言われた通りに手を伸ばす。
すると、伸ばした手は見えない何かにぶつかりくにゃりと曲がった。
ソレを見た俺も同じように女の子の方へと腕を伸ばす。だが、俺の方からはクローゼットの中へと手を伸ばす事が出来る。
「そのまま俺の手を掴んでみろ。引っ張ってやるから」
~うん~
女の子は俺の手を握ろうとするが、スルリすり抜けてしまい掴むことが出来ない。
~握れないよ~
女の子は泣きそうな顔になる。
「泣くな泣くな。でも・・・どう言う事なんだ?自分でここに入ったんだろう?」
この時の俺は相手が子供と言う事もあってか、不思議と恐怖心というものはなかった。
~うん。そこの窓から入った~
そう言って俺の後ろにある窓を指さす。
「窓?だって鍵がかかってただろう。入れるはずがない」
~鍵なんかかかってなかったよ。ガラスも割れてたし簡単には入れた~
「えっ?!ガラスが割れてる?!」
俺は立ちあがり、急いで窓まで行くと勢いよくカーテンを開ける。
「・・・なんだよ。割れてないじゃん。お前嘘つくなよな」
そう言いながら俺は振り向くが
「・・・あれ?」
先程までいた女の子の姿がない。辺りを見回して見るが何処にもいない。
「・・・何処行ったんだ?」
八畳一間の部屋。クローゼットから窓まで数歩歩けばすぐに着く。ガラスが割れてない事を確認して振り向くまでの時間は僅か数秒。その間に女の子は何処に行ったのか。
念のため玄関の方も確認するが、ちゃんと鍵がかかっている。
「は?何で?」
狐に包まれたような感覚になった俺は、呆然とその場に立ち尽くした。
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