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天使の羽
「高哉。そろそろ時間よ」
夢の中の世界を思い出そうとしばらくベッドに横になっていたけれど、階下から母親の声が聞こえてきた。だけど思い出すどころか掴もうとすればするほど、夢は霧のように形をなくしていく。
最近はこんな目覚めが多い気がする。いつからだっけと考え、それがひと月前のあの日からだと苦い感覚と共に思い出し、机の上に置いた瓶に目をやった。何の変哲もない小さなジャムの空き瓶。今は空のその瓶に、あの日確かに僕は入れたんだ。
夢の中のあの声、白い世界に佇む天使の羽を。
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