甘あま溺愛と驚きの中の壱花

2/8
169人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「はあぁぁ〜あ、壱花ぁ」 ドアを開けて中へと入り、玄関でぎゅっと抱きしめた。 「堪能〜〜」 そろりと背中に回る細い腕。自分だけが求めているのではない。ようやく求められるようになった。 身体を離した手で、今度は壱花の頬を包み込む。むぎゅっとなっているほっぺがたまらなく可愛い。そして、その見上げてくる漆黒の瞳。出会った頃となんら変わらない。まるで宝石のようだ。 唇にキス。一度キスをしてしまうと、欲が止まらなくなる。右腕を背中に回し、引き寄せた。身体がくっつき、壱花の体温と息がぐっと近づいた。 「んんぅ、」 漏れる吐息も口に含んだ。腕に力を込めれば、当然合わせている唇も深くなる。そうなるともう次には舌を入れたくなって、このままではヤバイと思い、腕を解いた。 「はああ。まじで嬉しい。俺の壱花ちゃんは、最高に可愛い!」 明るく言った。どうしようもない欲情を隠すために。 「ちょっとお邪魔していい?」 「もちろんです! どうぞお待ちしてました」 キスしたからか、頬が紅潮している。そんなほっぺをさすさすとさすりながら、壱花は部屋へと入っていった。その後ろ姿を見つめながら、靴を脱ぐ。壱花を抱き締めるために足元に落としておいたカバンを拾い上げ、そして部屋へと入った。 今日持ってきた話は、壱花にとっては信じ難い話となるだろう。 (また壱花ちゃんを驚かせることになるんだろうな……) 壱花には嫌われたくないが、この方法しか思いつかない。不穏な芽をひとつ、壱花の心に植え付けることになる。その芽がどう育っていくのか、最大の懸念はそこだ。 今、抱きしめた壱花を、この手で守り大切にしたい。それだけは、ジェインの中で決まっている。 が、ポケットにあるスマホ。その中にはジェインが自身の親族とやり取りを何度も交わした、複雑な内容のLINEがある。懸念材料の塊だ。 (それでももう俺は壱花を手放すことはできない) カバンの中に入っているのは婚姻届。自分のサインはすでに記入済み。 (受けてもらえるだろうか……) ジェインは廊下を歩きながらカバンを握った手に、力を込めた。 ✳︎ 「はあぁ、壱花ちゃんちのこたつ最高〜」
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!