契約結婚から真実の結婚へ

7/8
167人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
それは、家族のポートレート。いや、やはりイラストだ。 真ん中にはジェイン、レイラ。そしてその後ろには、ハリー、舞、そしてフレディ。 「マーガレットおばさんは写真を持ってなかったから、描いてもらえてないけど。ごめんね」 「いや、良い。上手に描けているな」 「褒めてくださってありがとうございます。すごく嬉しいです!」 その言葉を聞いて、壱花が両手を合わせて嬉しそうに喜んだ。 「だが、それより大切な人がひとり、足りないんじゃないか?」 フレディがそう言いながら、壱花を見た。その伯父の言葉に、皆が顔を見合わせて、そして。 「壱花のことですね。そう言ってくれて嬉しいです。ね? 壱花」 「は、はい!」 ジェインが横に立つ壱花の頬に、軽くキスをする。 「さあ、これでお墨付きをもらったよ!」 家族写真のイラストをフレディから受け取ると、「ここ! ここに壱花を描いてくれ! 俺の隣にね!」 ぱあっと明るい笑顔。今にもぴょんぴょんと飛び跳ねるがごとくに、壱花は喜んだ。 「はい! 仲間に入れてくださって、嬉しいです。ありがとうございます!」 「仲間じゃないよ、家族だよ」 「ファミリー! 良いですね」 壱花がにこっと笑う。 そんな壱花の肩を抱き寄せると、 「壱花はね、伯父さんに認めてもらうまで、自分の姿はここに描かないって、その一点張りだったんだ」 フレディが驚きの顔を見せた。 「そうなのか。見かけによらず、頑固なんだな」 「そうなんだよ。壱花はいつも強い。俺を引っ張り上げてくれるんだ、俺より一段も二段も上から、絶えず笑顔でにこにこしながらね!」 はははと皆で笑った。 ✳︎ ここで話は終わらない。 ジェインはその後、イギリス滞在中に、今までは断りを入れていたマスコミの取材を、片っ端から受けた。 『若きチャレンジャー』 『世界に影響力のある人物』 『未来ある御曹司100人』 主に、伯父フレディと父ハリーの事業を継ぐ者としての紹介ではあったが、それでもジェインの興した企業『J-planning』の将来性などにも言及、もちろん辛口評価はあったものの、そのほとんどが好意的な記事となった。そして最後に必ずと言って良いほど、「ジェインさん、あなたの理想の女性は?」と問われ、「私の理想の女性? もちろん妻の壱花です。彼女がどれだけ可愛いか知っていますか? いやすみません、やっぱり彼女のことは誰にも見せたくないし、誰も知らない方がいいから、内緒にしておいてくれます?」といたずらっ子のように笑ってみせた。 だからと言って、壱花が秘密の存在というわけではない。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!