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「そん…な事…。僕がもらったと言っても……あ、あれは道管さんの作った曲なんです。僕にどうこうする権利なんて…。」 「忘れたのか?俺があげると言ったんだ。和永のために作った曲を。お前に、俺が、あげるって言ったんだ。」 道管さんの瞳の奥に見える熾火のような灯りから僕の身体にもポッと灯が灯る。 チリチリとしたその鈍い熱さは身体の奥底に燻ぶるように息づいて。 次第に僕の息は上がっていった。 小さく、何度も喘ぐように息を吐く。 過呼吸気味とも言えるその様子をどこか痛ましそうに見つめながら、道管さんもまた小さく息を吐いて僕に囁く。 「和永……愛してる‥‥。」 ヒュッと喉が鳴る。 一瞬息が止まってしまったかと思った。 明確に言われることのなかった僕への思い。 誰にも愛されることのない僕には過ぎた気持ち。 だからこそ言葉にして告げられない事で、僕は満足出来ていたのに。 今、ここで聞いてしまったら、もう戻る事なんて出来ない。 「お前を愛してるんだ。我慢強くて、不器用で、一人ぼっちで泣くような和永を。」 本当は喉から手が出る程求めていた。 殴られて詰られて、狭い狭い孤独の場所で身を縮めていた日々も。 一人きりで過す静かな夜も。 僕を見て。 僕だけを見つめて。 僕だけを抱きしめてくれる存在を。 「もう逃げないでくれ。和永…俺と一緒に生きて行こう。」 答えを求めているのではなく、道管さんはそう言うと僕をそっと抱きしめた。 道管さんの胸に顔を押し当てて僕はまた自分が涙を流している事に気付いた。 止めようとしても止まらない。 ハラハラと流れるように落ちる涙は道管さんのシャツに吸い込まれていく。 「お前にあの曲が届いたなら…。そしてもう一度会えたなら、もう俺はお前を離さないと心に誓った。ははっ、勝手だって笑うか?でも、お前は逃げるだろう?俺を想っての事かも知れないけど、もう俺はお前を逃がしたくなかった。」 「ふっ…うっ…。」 「また泣いてるのか?泣き虫だなぁ、和永は。」
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