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離したくない。離れたくない。
その気持ちは僕も同じぐらい強いから。
このまま黙って道管さんの気持ちを受け入れるなんてフェアじゃない。
まだ怖くて不安な気持ちもあるけれど、それでもこうやって僕を求めてくれる道管さんの手を僕だってもう離せない。
「僕…こんなだけど…いい?何も持ってないよ。道管さんの荷物になるぐらいしか出来ないよ。」
「こんな軽い荷物。持ってないと同じだろう。それに俺の懐は広いからな。お前一人分なんてことない。」
ワザと意味を取り違えてそう言う。
「僕…大好きな人と一緒に、い、生きるって分かんないから。きっと、我儘ばっかり言っちゃうよ。道管さん、嫌になっちゃうよ。」
僕のつっかえながらの告白を聞いた道管さんは嬉し気に笑った。
「俺だってそうだ。大好きな人と一緒に生きたいと思った事なんてなかった。それならお互い初めて同士、試行錯誤していけばいいじゃないか。」
それに和永を嫌になることなんて絶対にない。
そう告げられた言葉が僕の身体を緩やかに縛る。
求められている事がこんなにも嬉しいだなんて。
「俺こそ和永に嫌われないか心配だ。お前はまだ若いし、こんなオジサン、見限られるんじゃないかってな。」
そんな事、絶対にっ、絶対に、ないっ。
そう言って抱き着いた僕の身体をしっかりと受け止めて、道管さんは僕の唇にキスを落とした。
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