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また同じように脅してくるのではないか。僕の事を盾にまたお金をせびりにくるのではないか。
週刊誌に面白おかしく書かれて、道管さんの評判を落とすのではないか。
考えると怖くなる。
僕という存在が道管さんの足枷になるのは想像できるからだ。
それでも、道管さんと一緒にいたい。
共に過ごして行きたい。
安井の所為でビクビクして過ごすのは嫌だった。
こんな風に考えられるようになったのも、道管さんがいたからだ。
彼が一緒に生きて欲しいと望んだから。
僕もその想いに応えたいと、そう思えた。
「安井の事は…。」
「ちょっと待って。一つ聞いておきたいことがあるんだ。正直に答えて欲しいんだけど……。」
「?……はい、何ですか?」
言い淀む道管さんの様子を訝しがりながら、僕は彼の言葉を待った。
「安井は…その……和永に触れた事はない?もちろんお前の身体が真っ新だったのはよく知っているけど。」
その理由に思い至って僕は顔が熱くなる。
「それでも和永とあいつは同じアパートの一室で暮らしていただろう?下世話な想像ばかりが頭に浮かんで、正直あいつを殺してやりたいぐらいな気持ちはあるんだ。」
物騒な事を言う道管さんに、僕は少し驚いて慌てて否定する。
「安井は僕に触ったりしなかったよ。僕の存在は道に落ちているゴミみたいなもので、あの人にとって何の価値もなかったんだよ。」
舐めるような嫌な視線を感じた事もあったけれど、それを正直に道管さんに伝えるのは何故か不味いように思えた。
僕の説明に納得いかないような顔つきでいたけれど、道管さんは僕がそれ以上何も言わないと理解したのか、一つため息をついた。
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