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「納得できない気持ちもあるけど…わかった、和永がそう言うならこれ以上それについては聞かない。それに、安井について話すのもこれで最後だ。あいつが今後和永の前に現れる事はない。」 「え…‥?」 「チンケなチンピラ風情の男にこれ以上和永が怯える必要はないんだ。」 「だ、だって。だって、ぼ、僕の事で色々言われたんでしょう?僕のためにお金だって…。」 驚きで声が震える。信じてもいいのだろうか。気が焦る。 「そうだな、一度払った。お前の居場所が知りたかったからな。でも強欲な安井はもっともっとと欲を出した。すぐに次の金をせびりにやってきたさ。でもな、俺は和永を隠しておこうだなんて思った事は一度もないんだ。お前の存在は俺の人生に必要で、誰に何を言われようと譲れるもんじゃない。それが恐喝理由になるだなんて安井は名前の通り気持ちの安い男だったって事だ。」 抱きしめられて告げられる言葉に僕は動きを止めた。 「あいつは警察に逮捕された。俺への恐喝もあったけれど余罪も色々あってな。暫くは外の世界に出てくることはないだろう。まぁ、罪状が確定して罪を償った後でも野放しにしたりしないさ。」 道管さんの腕の中で僕は力を抜いた。 安井がいなくなって僕のストレスは少なくなっていたけれど、心の底ではいつまたアパートに戻ってくるのか内心ビクビクしていたのは確かだったから。 急に目の前に現れて、今度こそ暴行されるかもしれないという恐怖は始終胸の中に燻ぶっている状態だった。
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