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「安井に金を払ったのは決してお前との関係を恥じているとか、お前の存在を隠しておきたいとかそんな理由じゃないんだ。探偵にでも頼めばお前の居場所はすぐに分かったかもしれない。それでも安井の話に乗ったのは……あいつがお前に手を出すんじゃないかと、それだけが気がかりだったからだ。」 道管さんから見て、安井は特に同性愛者ではないように見えたという。 潤沢な金さえあればわざわざ男の僕を抱くこともないだろうと考えたらしい。 実際に、その金をもって安井はアパートに戻ってくることはなかったし、僕はあいつに暴行されるようなこともなかった。 僕の安寧な生活は実は道管さんによって守られていたのだと気付いた。 「………じゃ、僕を守ってくれたのって、道管さんだ。」 「そう思ってくれるなら、嬉しい……。」 心底安堵したように僕を優しく抱きしめながら道管さんが呟く。 「嬉しい次いでに、俺の願い事を聞いてくれ。」 「何です?」 安心した僕は道管さんからの言葉に頷く。 もっとも何を言われても道管さんからの言葉にノーは言えなかっただろうが。 「俺も一緒に行く。和永を一人で帰すことはもうない。『絶対に』だ。……全部片づけて……帰ろう?あの家に。」 優しい優しい声だった。 僕はその言葉に新しい涙を流し、道管さんへの返事は言葉にならなかった―――。
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