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きっと隣の人が消し忘れたTVから流れていた音だったんだろうと思う。 僕の部屋には小さなTVがあったけれど、僕が勝手に触れることは許されなかったから。 あれはいったい何の音だったんだろうと暫く頭の中で思い描いて、学校の音楽の授業で先生が弾いてくれたピアノの音と一緒だったと分かった時は何だかとても嬉しかった記憶がある。 謎を解いたような気になって、その日一日ずっとニコニコしていられたぐらい。 でもあの時聞いたピアノとは違って、今聞いてる音はもっと飛び跳ねているように思える。 ピロンとジャンプ。ポロンと転んでダーンと立ち止まる。 それはとても自由に思えて僕はやっぱりちょっぴり幸せな気持ちになったのに、今度は少し切ない気持ちになって目を閉じた。 暫く聞こえていた音は急に鳴り出した電子音で終わりを告げた。どうやら時計のベルみたいだ。ピピ、ピピ、ピピと鳴っていて誰かが止めてくれたようですぐに音は鳴り止んだ。 次にバタバタと走って行く子どもの足音が聞こえて、同じように遠くから「さよーならー」という男の子の声が聞こえた。 こどもの声・・・? ここは本当に何処なんだろう。もしかして学校?それにしては僕が寝ている部屋の調度品は豪華だ。 それなら養護施設みたいな所かな。子どもの声が聞こえたって事は誰かのお家なんだろうか。 考えても分からない事を何度も何度も反芻していたら頭がクラクラしてきた。と同時に僕は自分が酷く弱っていて身体も満足に動かせない状態だと気付いた。 喉がとても渇いていた。カラカラの体内からはほんの少しの唾も出てこなかった。 喉が引き攣れるように痛くて声も出ない。これじゃ誰かに呼びかける事も出来ない。 カチャ 部屋のドアが開いた音がする。 誰か入ってきたようで僕は緩慢な動作でドアへ顔を向けた。 あ……… 入ってきたのは見覚えのある人だった。僕が意識を失う前に声をかけてくれた巨人のような人だ。 もっとも、ベッドに横になって見てみれば彼は巨人ではなく、成人男性としては少し高めではあるけれど世間一般の男性と同じ身体付きをしていた。
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