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「ああ、起きたかい。」 穏やかな声で僕に話し掛けてくる彼に話し掛けようとして、カサついた喉から声が出る。 「…あ……あ”……。」 濁点のついた声しか出ない、と僕は慌てて口を閉じてゴクンと唾を飲み込んだ。 辛うじて出てきた唾は大量ではなかったけれど、それでも僕の意思した通りほんの少し喉を潤したようだった。 「あ……の……。」 「ああ、喉が渇いただろう。取り合えず水でも飲みなよ。」 彼はサイドテーブルに置かれていた水差しからわざわざ水を汲んでくれた。 僕はすぐさま起き上がろうとしたけれど腕に力が入らない。グッと突っぱねた腕がプルプルと震えていて今にも崩れてしまいそうだ。 「ああっ。ほら、ちょっと待って。」 イラつかせてしまっただろうか。僕は彼の言葉にビクッとなったけれど、それについては何も言われず、グラスをテーブルに置いてから彼は僕の身体を起こしてヘッドボードに凭れかけさせてくれた。 「はい、水。っと、零しそうだな。しょうがない、じゃ口開けて。」 彼は丁寧に僕の口元にグラスを持ってくると小さく開けた僕の口に少しずつ水を流してくれた。 ゴクンゴクン ゴクンゴクン 水を飲み込む音が部屋に響く。喉を鳴らすほど水を欲していたのか、と自分自身でビックリしたけれどよく考えたら気を失う前から随分水分も取らずに歩き続けていたんだ。脱水状態になっていたとしても可笑しくない。 「ゆっくり…ゆっくり飲むんだ。そう、ゆっくりだよ。」 彼は僕にそう言って注意しながら、本当にもどかしいほどゆっくりと水を与えてくれた。 時間をかけてグラスの水をほぼ飲み終えた僕はほーっと一息つくと彼は僕の様子に満足したように笑った。 「もういいかな。ほら、寒くないようにして。」 彼は空になったグラスをテーブルに置くと近くに置いてあったひざ掛けらしきものを僕の肩に掛けた。 「じゃ、ちょっと聞かせてくれるかい?まず最初に自己紹介だ。僕の名前は道管 進(どうかん すすむ)。君の名前は?」 「あ…う…。」 「言いたくない?じゃ、何処に住んでるの?」 「え…えっと…。」 「うーん、これも言いたくないかい。じゃ、どうしてあんな場所に1人でいたんだい?家出?」
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