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矢継ぎ早に質問されて僕は言葉に詰まる。
質問された事はほとんど答えたくないもので。僕はどうやって誤魔化そうかと目をキョロキョロさせる。
名前もそうだけど、最後の質問は答え方によっては警察を呼ばれてしまう。そうなるともう僕は二度と自由に出歩く事は出来なくなるだろう。そう思ったら自然に身体が動いて彼の袖を掴んでいた。
「ぼ、僕っ。名前はい、伊藤 和永って言いますっ。20歳ですっ。成人してますっ。」
2歳サバを読んだ。本当は18歳だったけれど、自分が成人していると言わなければ彼は警察に連絡してしまうかも知れない。そう思ったら少々の嘘を吐く事に罪悪感はなかった。
「あのっ、僕ちょっと迷ってしまって…。ここって何処なんですか?」
ぎゅうっと彼の洋服が皺になるほど強い力でしがみついていた。これじゃ嘘を吐いているってバレてもしょうがないのに、手から力が抜けない。
「あのっ、あのっ、僕っ。」
「分かった、分かったよ。えっと…和永くん?取り合えずお腹空いてるだろう?スープがあるから食べなさい。」
僕の手を包み込むように握ってゆっくりと力を緩めると道管さんは少しずつ僕の手を外していった。
「その様子じゃ一人で食べられないみたいだし僕が食べさせるよ。」
「そ、そんな…。」
「いいから、気を使わないで。見た所体力も無さそうだし、君が何処に住んでいるのかはさておいて、少し体調が回復しないと帰れないと思うよ。」
道管さんはそう言ってそれ以上の事は聞かず、僕をもう一度ヘッドボードに寄りかからせた。
「さ、ちょっと待っててね。スープを持ってくるから。」
僕が何か言うよりも先に道管さんの姿は部屋から消えて、またあっという間に手に食器を持って戻ってきた。
「保温されてたから温かいよ。さぁ食べよう。」
僕は本当に体力が無くなったようでスープの入った器を手に持ってカトラリーを口に運ぶことさえ難しかった。
「僕がやってあげるから。さぁ、口を開けて。」
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