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水を飲ませてもらった時のように道管さんは僕の口元にスプーンを寄せて食べさせてくれようとした。 今までそんな風に甲斐甲斐しく世話をされた事など無かったから僕は本当にこのままスープを食べさせてもらっていいのか迷ってしまった。そんな迷いが現れたのか口が中途半端な大きさに開いて、掬われたスープがタラタラと零れてしまった。 「うわっ。」 「あっ、あっ。ご、ごめんなさっ。す、すみませっんっ。」 僕は咄嗟に頭を抱えて蹲り、何度も何度も謝罪した。 親切にしてくれた人の恩を仇で返したようなものだ。垂れたスープは寝具を汚してしまっただろう。 こんなに綺麗なシーツ、直ぐにシミ抜きしたら元に戻るだろうか。 僕は何度も謝りながら罵倒されるか殴られるか、その衝撃を想像して身体を固くした。 こんな粗相をしてしまったんだ。ベッドから引きずり降ろされてもしょうがない。そう思って何度も小声で謝る。 どうか、どうか許して下さい。ちゃんと洗って綺麗にしますから。 そうして出ていきますから。 だからどうか許して下さい。 ビクビクとしていた僕に道管さんは、はぁ、と大きくため息を吐くと 「大丈夫だから、和永くん。怒ったりしないよ。さ、少しでも食べて早く力を付けよう。そうしたら僕の手助けなんか必要なくなるよ。」 優しい言葉にビックリした。 本当に?本当に怒ってないの? 伺うように道管さんの顔を見ると彼は僕にスプーンを差し出したままだった。 「ほら、早く食べてくれないともっと零れてしまうよ。」 その言葉に僕は慌てて口を開いた。 あむっと食べたスープは温かくて柔らかくてとても美味しかった。 「そうだよ。ゆっくり食べよう。」 道管さんの言葉は何処までも優しくてスープの温かさよりもずっと優しく心に染みた。 「食べ終わったらもうひと眠りするといい。ああ、そうだ。和永くん、持ち物はないの?君の荷物は?」 そう聞かれて僕は目を伏せた。
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