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「あの、天国へはどうやったら行けるんでしょうか?」
春は頭のおかしな人が増えるという。寒さで縮こまっていた脳が活性化し、気分が高揚するのだそうだ。
本当かどうかは知らないが。
でもあながち間違いではないと思う。
現に今、僕の目の前には「頭のおかしな人」がいる。
その人はピンクのカーディガンを羽織った人だった。
さらさらのロングヘアーにふっくらとした頬、整った眉、とがった顎、すらっとした鼻。
年の頃は僕と同じ20歳くらいだろうか。
「頭のおかしな」という印象を持たなければ、きっと振り向いてしまうくらいの美人さんである。
その頭のおかしな綺麗な女性は柏木公園の桜並木からひょっこり現れて、突然僕にそう尋ねてきたのだ。
「天国へはどうやったら行けるんでしょうか」と。
「て、天国ですか?」
しどろもどろになりながら聞き返す僕に、彼女はにっこりとほほ笑みながら言った。
「はい、天国です。英語でヘブンのほうです」
そう言ってご丁寧にもスペルを指でなぞる。
「言ってる意味がよくわからないんですけど……」
あまりにもポカンとしていたのだろう、彼女は「あ!」と叫んで首を振った。
「ご心配なく! 私、怪しいものじゃありません!」
ペコペコと頭を下げる謎の女性。
どうやら怪しいというのは察してくれたらしい。
僕の中で「頭のおかしな人」から「少し頭のおかしな人」に格下げされた。
「実は私、幽霊なんです」
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