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結論から言うと、天国への行き方など見つからなかった。
というより、彼女の存在を誰も信じてくれなかったのだ。
まあ、当然と言えば当然だ。
天国へどうやって行くのか聞いて来る幽霊なんて聞いたことがない。
家族や友人に話しても「ウソだー」の一言で終わってしまった。
「ごめんなさい、結局天国への行き方わかりませんでした」
次の日、僕は彼女の元を訪れて素直に謝った。
「そうですか」
「すいません、力になれなくて」
「いえ、こちらこそ無理なお願いをしてもらって……」
しゅん、とうなだれる幽霊さん。
なんとか力になってあげられないだろうか。
「あの……」
「はい?」
「素朴な疑問なんですけど、どうして天国へ行けないんですか?」
「どうしてと言われましても……」
そうだ、まずはそこからだ。
普通に考えて天国へ行けない幽霊は何かしら成仏できない理由があるはずだ。
今世に未練を残して死んだとか、誰かを恨んだまま死んだとか。
「もしかしたら何かやり残したことでもあるんじゃないですか?」
「やり残したこと……」
「なんでもいいんです。なにかありませんか?」
「あ! そういえば」
そう言って彼女はポンっと手を叩いた。
「なんですか?」
「死ぬ直前、櫛風堂の桜餅アイスが食べたいなーって思ってました!」
「あ、あいす……?」
「はい! 期間限定の和風アイスです!」
だいぶ想像してたのと違ったのが出てきた。
「ご存じありません? この近くにある和菓子店で、数週間前に発売したアイスなんですよ」
「それが食べたかったんですか?」
「はい、とっても」
いや、違う。
僕が求めてたのはそんな答えじゃない。
とはいえ、やり残したことを聞いた手前、否定することもできない。
僕は漠然とした不安を隠しつつアイスを買ってあげることにした。
「じゃあ、それ買ってきますね」
「え、買ってくださるんですか!? わあ、嬉しいなあ!」
幽霊さんは嬉々として飛び跳ねていた。
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