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結論から言うと、どれもこれも空振りだった。
彼女のやり残したこと、気になってたことを一つ一つ試してはみたのだけど、一向に成仏する気配が感じられなかった。
「はあ、どれもダメでしたねー……」
「すいません、いろいろ手を尽くしてくださったのに……」
結局、僕らは桜の木の下まで戻ってきた。
ふわっと身体が軽くなる。
気がつけば、僕に憑りついていた彼女が目の前に立っていた。
「でも今日はすごく楽しかったです! ありがとうございました!」
嬉しそうに笑う彼女を見ると、なんだか僕もちょっぴり嬉しかった。
「よかったです。なんだかんだいって、僕もけっこう楽しかったですし」
それはお世辞ではなく本心だった。
彼女が幽霊でなく生きていた人間であったならと何度思ったことだろう。
「今日はもう遅いからまた明日来ますね。それまでに、また何かやり残していたことがないか思い出しといてください」
僕の言葉に彼女は申し訳なさそうにうつむく。
「大変ありがたいのですが、もう大丈夫です。あなたにばっかり負担をかけてしまっているので」
「いや、そんな……。負担だなんて」
「このままここにとどまって、天国へ行く方法を探しますね」
「………」
「それに、私にはなんのお返しも出来ませんから……」
そう言って寂しそうに笑う彼女がまた不憫でならなかった。
「大丈夫です、気にしないでください!」
僕は元気よく答えた。
「え?」
「僕もなんとかあなたが天国へ行けるよう、精いっぱい頑張りますから!」
「で、でも……」
「それとも僕がいると迷惑ですか?」
「そんなわけありません!」
「じゃあ最後まで協力させてください」
彼女は頬を赤らめて泣きそうになりながら「ありがとうございましゅ」と言った。
噛んでる姿が盛大に可愛い。
思わず抱きしめたくなる。
まあ、抱きしめようとしてもすり抜けるだけだけど。
「じゃあまた明日」
「はい」
僕らはそう言って別れた。
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