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「貴之君、美和ちゃん、子供はできれば二人以上は作って下さい。是非、若い二人に少子化を止めてもらいたい」
叔父のスピーチに会場から笑い声と拍手がわいた。
貴之と顔を見合わせて、照れくさい気持ちでいっぱいになった事を今でも覚えている。
結婚したのは私が三十二歳で貴之が二十九歳の時だった。
出会いは友人の結婚式。貴之と席が隣になり、その日初めて言葉を交わした。だけど特に話が弾んだ訳ではなく、新婦との関係について話した程度だ。
帰りに駅のホームで電車を待っていたら「電車遅れてるみたいですね」って話しかけられた。振り向くと「夜も遅いですから、来るまで一緒にいましょう」と貴之が言ってくれた。
いつもだったら会ったばかりの男性の申し出は遠慮するけど、初めての駅で心細かったから一緒にいてもらった。
電車が来るまでの三十分。貴之の隣は披露宴の時よりも居心地が良く、前から知ってるみたいな感じだった。
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