第1話 よくある転移

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第1話 よくある転移

 ここはどこ?  私は横たわっていた体を起こす。 『ようこそ、『エニワン』へ』  どこからか若い男の声が聞こえる。  誰? 『あなたは死にました』  どうして? 「あなたは誰ですか?」 『これは申し遅れました。私は女神代行のエリアスと言います』 「女神代行?」  目の前には市役所の様なカウンターがあり、17~18歳位の男の子がいた。  普通ここは女神ではないのか?  するとエリアスと名乗った少年は、俺の心を読んだかのように答える。 『えぇ、そうです。しかし女神はその世界に1人しかいないうえに24時間、死者がやってきます。そして最近は労働条件が厳しくなり女神の替わりも居ないので、近親者である息子の私が代行しているのです』  なんだそれ。  私の名は村野(むらの)玲奈(れな)23歳の社畜(しゃちく)。  いいえ、この状況を見れば『だった』といえばいいのかしら。  大学を出て商社に勤めたけど、そこは酷い会社だった。  毎晩遅くまでの残業や、休日出勤は当たり前。  田舎から出てきた俺は理不尽な仕事内容にも、自分の意見が言えないように会社に飼いならされていった。 『あなたは深夜、遅くまで働き突然倒れお亡くなりになられたようですね』  私はそのまま倒れ朝、誰かが出勤してくるまで誰にも気づかれないか。  1年間、がむしゃらに働いた結果がこれなのね。  笑えない最後だわ。 「それで私はどうなるのでしょうか?」 『あなたには選択肢が2つあります。このまま昇天(しょうてん)する。または本来、全うするはずの寿命前に亡くなっているので、もう一度、別の世界に転移することができます』  転移?!  時間がある時に現実逃避のために読んでいた、あの空想小説の世界? 「転移する場所はどんなところでしょう?」 『剣と魔法の世界です、といっても分からないでしょうから、身を立てることが出来るスキルを授けましょう』 「それはどんな能力でしょうか」 『そうですね、剣豪、大魔導士などはどうでしょうか?』  う~ん。そういわれても、その能力もざっくりでよくわからない。  実際に転移したら戦闘や魔法が必要ないかもしれない。  そうなれば宝の持ち腐れ、生活もできないわ。 『では創生魔法はどうでしょうか?』 「創生魔法?」 『えぇ、想像した事を実現できる魔法です。使い込んで行けばレベルも上がり、生活に役立つはずです』 「では、それでお願いします」 『わかりました。それと転生の定番である鑑定と異世界言語、ストレージも付けておきます。これだけでもうまくやれば、生活できるはずです』 「ありがとうございます。エリアス様」 『では良い旅を…。はい、次の方どうぞ!!』  こうして私は第二の人生を踏み出した。  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  読んで頂いてありがとうございます。
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