9月

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9月

  助けてよと言えといわれて言ったけど待っているのは叱責ばかり   払われた伸ばしかけてた小さな手子供が崖に立つとも知らず   草枕子供が独りアーケード「見事に捕獲」地元のニュース   才能と努力をどれだけ重ねれば僕は愛していただけますか   さよならと囁く風に目を濡らす夕日に溶ける君の横顔   咳ひとつ慎ましやかにけそうじた月夜に浮かぶ微かな光   「この家に産んでごめんね」泣く母の 強く優しい腕の冷たさ   空の虹写真を早く見せたいと思うのは他でもないあなた   さよならと囁く君の目の奥に夕闇の色消える泡沫   かわいいとみんなに言われなくていいだけど君にはそう言われたい   君臨はすれど統治をせぬ母の笑みと懐のあたたかきかな   教えてよ今の私の保護色は無色じゃなけりゃ何色なのか   「助けて」と言えば助けてくれるのがおとぎ話とわかっていたら   美しい姿じゃないけどわたしにも赤い林檎を1つ下さる?   このままじゃダメだと君は焦るけど向かいのカフェでゆっくりしようぜ   今のうち私が笑えるそのうちに利き手ピンクのミサンガを切る   息をしたただそれだけが今僕を在らしめる唯一の実証   玄関を出られぬ朝に聞こえるの母の嗚咽とわたしの嗚咽   朝露に濡れたる袖を絞りつつ今日も社会へ宣戦布告   「わからない,教えて先生」と聞けたらてるてるぼうずを吊らずに済んだ?   これは僕にしか出来ないそう思えばこそ生きてこられてたのに   目覚ましが鳴る瞬間の薄暗さなんとかなりませんかお医者さま   父の死がまったく悲しくないことそれがわたしはいちばん悲しい   「いらない子」ええそうですね出てゆくわただの瓦落多と言われぬために   故郷は好きだけれどももう決めた身を守るためさよならすると   秋雨とプリント束に降られつつゆく坂の先には柔い靄   ぼくゆうしゃLv1だけどたたかうよLv99のまおうと   人生がイージーだったらとは言わないせめてノーマルモードだったら   僕にだけ試練を与えすぎたので地獄の旅は神を道連れ   西日射す音楽室で君が弾くショパンがたまに聴きたくなるの   紅葉つ街おそろで買ったマフラーを巻いてはのけて別のに替える   「悲しい」とあえて言葉にしてみてどんな悲しさか想像させる
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