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結局色々走り回っていたので、成瀬さんのマンションに到着したのは夜の九時になっていた。なんせ自分のアパートもすぐ近くなので、大和と鉢合わせたら、という恐怖に追われながらもなんとかたどり着いた。まだ成瀬さんは帰っていないだろう、家の中で待たせてもらうことにしよう。
エレベーター前にたどり着き呼び出す。鞄の中に入っている鍵を、一度取り出して触れた。ひんやりとした金属の冷たさが、心地よく思えた。
これ使うの、今日が最後だろうな。
しっかりしまいながらため息をつく。エレベーターが到着したので乗り込んだ。
自分でもかなり勇気を振り絞ったな、と思う。成瀬さんにちゃんと告白して終わろう、だなんて。しかも、正直今それどころじゃない。でも言わなくちゃならない、自分へのけじめなのだから。このままじゃ言えないままフェードアウトしそうだ、それだけは絶対に嫌。
私が好意を抱いていたと知れば、どんな顔をするだろう。なんていうだろう。成瀬さんが言わなきゃいけないこと、って、やっぱり新しく彼女が出来たとかそういうことだろうか。
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