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幻聴だとは思えなかった、だって目の前の成瀬さんですら驚いてる。私と彼はほぼ同時にゆっくり振り返った。そんなわけない、いるはずない。でもやっぱり、そこにはあの爪先まで女子力全開のあの子が立っていたのだ。不思議そうにこちらを見ている。
「え、高橋さん?」
私のひっくり返った声がした。
高橋さんは首を傾げながらこちらに歩いてくる。ヒールの音がカツカツと廊下に響いた。私と成瀬さんを交互に見て、怪訝な顔になる。
「あれー? 何で二人が一緒にいるんですかあ? ここって、成瀬さんのおうちですよね?」
……見られた。
どう言い逃れも出来ない、私と成瀬さんが部屋に入ろうとしてるところ。よりにもよって高橋さんに見られた。これまで社内の人にばれないよう必死になってきたというのに。
頭が真っ白になり混乱している私をよそに、成瀬さんは尋ねた。
「そもそも、なんで君がここに? 俺、自分の家を教えた記憶ないんだけど」
不愉快そうな声だったが、高橋さんは怯えなかった。ニコリと笑い、持っていた鞄から何かを取り出す。目を凝らして見てみると、免許証のように見える。
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