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私は彼女がここに来た理由より、今日も成瀬さんと一緒にいたのが高橋さんだということにひどく落ち込んだ。もう心が色を無くしてしまったように、ずんと落ちる。二日連続で、食事に? 今日も遅くなるって言っていたのは、この予定があったからなのか。
随分親しいんだ……やっぱり、いい感じなんだろうか二人は。
告白してすっきりしよう、と意気込んでいたくせに、そんな気合は完全に消失していた。先ほどまでの勢いは一体どこへ行ったのか、私はもはや立ち直れないところにまで来ていた。
「それで……なんで佐伯さんがいるんですか? 家に入ろうとしてませんでした?」
どこか冷たい声がした。高橋さんの鋭い視線がこちらに来るのを感じる。私はどう答えようと口ごもるが、成瀬さんが冷静に答えた。
「それには理由があってね、俺はちょっと佐伯さんに頼みごとをしてるんだ」
「頼み事? それってなんですか?」
「俺仕事が終わるとすごくだらしなくてね。疲れから食事さえもさぼっちゃうくらいで。それを偶然知った佐伯さんにご飯を差し入れしてもらってるんだ。ただそれだけのこと」
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